衆院長崎3区補選 立民、維新 野党一騎打ちか 告示まで1週間

5日、街頭でマイクをにぎる維新の井上翔一朗氏(右)と、国政報告会で演説する立民の山田勝彦氏(左)。両陣営とも自民支持層を意識した前哨戦を繰り広げている=いずれも大村市内

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で略式命令を受けた谷川弥一前衆院議員=自民離党=の辞職に伴う衆院長崎3区補欠選挙(28日投開票)は、16日の告示まで1週間となった。厳しい逆風を背景に、自民は県内の国政選挙で初めて独自候補擁立を断念。一方、候補を立てる立憲民主党と日本維新の会は着々と準備を進める。両党幹部も本県入りし、「野党一騎打ち」を見据え、前哨戦に火花を散らしている。

 「不祥事で補選に至った。経緯が非常に重かった」。7日、自民県連が長崎市内で開いた選挙対策委員会後の会見で、古賀友一郎会長は候補擁立を見送った理由をこう説明した。
 県連は2月から党本部と擁立の可否を協議。同13日、茂木敏充党幹事長は古賀氏らに「戦う準備」を指示したが、県連の候補選定は難航。主戦論が根強い3区の県議らに後押しされる形で県議1人が手を挙げたものの、最終的に失速した。党本部も候補擁立を断念、今月2日に不戦敗が決まった。
 党関係者によると、もともと本県選出国会議員4人の中には「次期衆院選で野党が勢い付く」との危惧があり、主戦論も一部にあった。しかし、結局は全員が不戦敗を容認する「慎重論」に。古賀氏を含む議員3人は宏池会(岸田派)の出身で「岸田首相の意向が働いた」との見方もある。
 古賀氏は2月下旬、党本部で茂木氏に「できれば(補選を)やりたくない」と吐露。党関係者は「この発言で不戦敗へ向かった。党本部は『戦えない』と感じたのだろう」と話す。
 自民の不戦敗が決まり、立民と維新は野党対決を想定し、選挙戦の準備を進めている。与党候補の不在で投票率の低下を気にかけながら、自民支持者が多い保守層の切り崩しを狙う動きも見え始めている。
 維新は新人の井上翔一朗氏(40)が出馬予定。5日、馬場伸幸代表が大村市で街頭演説した。裏金事件を巡って岸田首相の責任を追及する一方、自民批判一辺倒は避けた。「維新は改革する保守の政党。自民から乗り換えを促す意図がある」と党関係者は明かす。
 立民は前回衆院選で谷川氏に惜敗した現職の山田勝彦氏(44)=比例九州=が迎え撃つ。6日には岡田克也党幹事長が対馬市入り。谷川氏が制定を主導した国境離島新法を拡充する一部改正案を今国会に提出する意向を示すなど、保守層が多い離島の有権者へのアピールを強めている。
 行き場を失った自民票を意識した戦いは、さらに激しさを増すとみられる。

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