生まれつき両目の眼球がい愛犬ムゥくん 同居犬たちと活発に過ごす様子を聞いた

この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。

今回は、生まれつき眼球がない「無眼球症」のムゥくんを迎えた飼い主さんの暮らしぶりやお世話の工夫をご紹介します。

元保護犬だったムゥくん。輝く笑顔にくぎづけに

ムゥくん(オス・1才/6.8kg/ミックス/ポジティブでやさしい)

神奈川県にお住まいのSさんの愛犬ムゥくんは、生まれつき眼球がなく全盲ですが、いつも愛らしい笑顔を絶やさず、日々元気いっぱいに過ごしています。
Sさん宅にはほか5頭の愛犬がいますが、ムゥくんはハンデをものともせず、同居犬たちとも活発に走り回ります。
Sさんがムゥくんと出会ったのは、2023年年5月のこと。動物保護団体のSNSに掲載されていたムゥくんの写真をたまたま見つけ、すぐに家族として迎えることに決めました。

「ムゥが全盲だからとか、そういうことは関係なく、満面の笑みで写っていたムゥの姿にくぎづけになりました。そして次の瞬間、『あ、このコはうちのコになる!』って思ったんです(笑)」と話すSさん。もともと10年前から神奈川県を拠点とした動物保護団体のスタッフとして多くの犬たちの命を救ってきました。現在は自身の仕事をもちながら、無理のないペースで保護活動も続けています。
「動物保護団体のスタッフとして活動していたとき、福島県から元被災犬だった3頭を家族として迎えました。3頭は親子かきょうだいだったのですが、今年4月に、そのうちの2頭が偶然にも同じ日に虹の橋のたもとに行ったんです。そんななか、ムゥと出会うことができて、深い縁を感じました」

Sさん家の5頭の愛犬たちは、ムゥくんをすぐに受け入れてくれたそう。ハンデがあることを理解しているようで、みんなやさしく接してくれます

生まれつき眼球がないことが動物病院での検査で判明

こうして、ムゥくんをSさん家に迎えて落ち着いたころ、かかりつけ医であらためて目の詳細な検査をし、生まれつき眼球がなかったことが判明。
「ムゥは、まばたきするような目の動きをたまにするので、奥に小さな眼球があるのかな、と思っていましたが、検査の結果生まれつき眼球がなかったんです。眼球はなくても涙腺はあり、毎朝粘度のある涙が多く出るので、そのケアは欠かさずに行うようにとかかりつけ医の先生からはアドバイスを受けました」

また、最初に家に来たとき、ムゥくんはトイレの場所を把握できるまでオムツをつけることもありましたが、Sさんは、愛犬5頭と同じように排泄も自分でちゃんとできて、散歩にも普通に行ける犬になるように、教えていこうと決めたそうです。

大好きな散歩のとき、ムゥくんはニオイによって自分がいる場所を把握。刺激になるよう異なるコースを回るようにしています

「ムゥが全盲なのは個性のひとつ。『かわいそう』と思ったことは一度もありません。ムゥは家に来たときから物怖じもなく、ポジティブに何にでも挑戦できるコなんです。なので、ムゥだけを特別扱いしないで、ほか5頭の犬たちと分け隔てなく接していこうと思いました。もちろん、ケガなどのアクシデントがないよう、注意すべきところはしっかりケアしたうえで」とSさんは話します。

6頭の愛犬を連れての散歩。ムゥくんは常にSさんの足の横を歩き、ほかの犬たちも定位置をキープして歩きます

出典/「いぬのきもち」2024年1月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
写真/犬丸美絵
写真提供/Sさん
取材協力/葉山どうぶつ病院
取材・文/袴 もな
※掲載の情報は「いぬのきもち」2024年1月号発売時のものです。

© 株式会社ベネッセコーポレーション