【ソフトバンク】「モイネロ2世」の18歳ダリオ・サルディ 母国キューバを離れ…NPB選んだ理由

ソフトバンクでの支配下契約を目指している育成投手のダリオ・サルディ

ソフトバンクに今年1月に入団し「モイネロ2世」として将来を嘱望されているのがキューバ出身左腕、ダリオ・サルディ投手(18)だ。かつて野球大国と呼ばれたキューバは今、若いエリート選手が次々と海外へ活躍の場を求めている。疲弊する母国野球の実情、遠く離れた日本にやって来た理由を聞いた。(取材構成=福田孝洋)

U―18キューバ代表で母国の未来を担う左腕は、長身から繰り出す真っすぐと落差の大きいカーブを持ち味とする。育成契約からのスタートだが、世界的原石の可能性は無限に広がっている。近年NPBの競技レベルは格段に上がり、どの球団も助っ人補強が困難を極めている。そんな中で、ソフトバンクは外国人選手を自前で育てるシステムにかじを切った。中南米の有望選手がメジャー一択だった時代は変わろうとしている。サルディはなぜ日本を、ソフトバンクを選んだのか。

サルディ 政治的な問題などもあり、キューバの選手たちがメジャーリーグでプレーすることは現実的ではなく、難しい。それでも同世代のキューバ選手にとっては、NPBよりもMLBの方が近い存在であることは間違いありません。実際、U―18キューバ代表メンバーの20人中、国に残ったのは僕を含めて4人だけでした。

キューバのアンダー世代で代表に入る実力者であれば、例外なくMLB球団の調査の対象となる。サルディももちろん熱視線を集めた逸材。なぜ同胞たちに追随せず、一人だけ日本行きを決めたのか。

サルディ やっぱり、いろんな意味でキューバ人にとってはMLBの方が近い。まずドミニカに行って、そこからメジャーに行くのが一番の近道。でも、プロセスは大変です。亡命しないと道は開けないですし…。一方で日本の契約を取るのは、時間的に長いというのがあります。1年後に契約すると言われても、イメージが全くつかなかった。ただ、担当の萩原健太スカウトが明確にプロセスを説明してくれました。彼はわざわざ僕の実家にまで来てくれて、一緒にいろんなところに出掛けた。家族とも一緒の時間を過ごしてくれた。健太さんの存在はすごく大きかったと思います。

来日する直前までプレーしていた母国のビジャ・クララでの給料は月々12ドル(約1818円)だったという。野球選手として生きることを決めた18歳。日本で身を立てなければならない理由を素直な言葉で語った。

サルディ キューバの若い人たちが国を出てしまうのは、何もないから。貧しいというのが一番にある。今、キューバはどこの家庭も生活が苦しい状況。僕もそういう家庭で育ちました。そんな境遇も、僕がここに来た一つのきっかけかなと思います。野球で契約を取ってプレーすることで家族を養うことができる。家族をサポートする手段としてここに来たというのはあります。

来日して2か月がたった。覚悟を持ってやって来た18歳は、たくましく日本でのキャリアをスタートさせた。まだ10代。故郷を恋しく思う気持ちは強い。だが、それを表に出すことはしない。偉大な先輩であるリバン・モイネロ投手(28)のサポートも心強い。

サルディ 日本には親近感がありました。僕の弟がアニメオタクのようなところがあって「ONE PIECE」や「呪術廻戦」などをよく一緒に見ていたんです。あとは、キューバで日本文化を紹介するドキュメンタリーを見たことがあって、エスカレーターの片側にきれいに整列して他人を思いやることのできる国民性にすごく感銘を受けたんです。日本に来て、それを目の当たりにした時は感動しました。寮のご飯も、外で食べる食事も本当においしい。モイネロ選手には、もう4回ほど食事に連れて行ってもらいました。豚骨ラーメン、しゃぶしゃぶ、焼き肉…。本当においしい。実は体重がこの2か月で10キロも増えたんです。もちろんトレーニングの成果でもあるんで、そこはご理解ください。

その高いポテンシャルから「モイネロ2世」の期待がかけられているサルディ。今後、どんな成長曲線を描いていくのか。自らの強みを知る知的な左腕は、芯の強さを感じさせる言葉で意気込みを語った。

サルディ 僕はあまり目立つことが好きじゃなくて、大きいことも言うタイプじゃない。今、思っていることは着実に進んでいきたい、それだけです。皆さんに「モイネロ2世」と言っていただけるのはすごくうれしい。でも、僕はダリオ・サルディ。僕だけの道を歩みたいし、つくりたい。モイネロ選手にこの前「来年、一軍で一緒に投げるぞ」とハッパをかけてもらった。もちろん、その期待に応えたいと思っています。とにかく、自分らしく頑張りたいです。ホークスファンの皆さん、どうぞよろしくお願いします!

☆ダリオ・サルディ 2005年11月12日、キューバ共和国ビジャ・クララ州生まれ。身長186センチ、体重91キロ。左投げ左打ち。7歳で少年野球を始め、9歳の時に外野手から投手に転向。12歳で地元チームである「ビジャ・クララ」でプレーし、17歳の時にプロ契約を結んだ。中日のクリスチャン・ロドリゲス内野手は同僚としてプレー。主な球種はカーブ、チェンジアップ、スライダー。U―15、U―18キューバ代表。背番号176。

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