「なんで盗むの」常連客からの大切なプレゼント 京都の町家カフェが懇願「ただそっと返して」

「なぜお店のものを盗って行かれるのでしょう」。京都市左京区古川町通仁王門下ルのカフェで「商い中」や「支度中」と書かれたネコの形をした看板が盗まれた。看板は常連客からプレゼントされた思い出の詰まったもので、店主の女性は「なんで盗むのか。悲しみしかない」と訴える。

カフェは「SAVON’S BAKE FACTORY TAMAYURAN(サヴォンズベイクファクトリーたまゆらん)」。以前は銀閣寺(左京区)近くにあったが、2022年に現在地に移転した。築約130年の町家を改装したカフェで、地下には戦時中に造られたとされる防空壕が残る。店内にはネコの写真が飾られ、定期的にネコの譲渡会が開催されるなど愛猫家には知られたカフェだ。

店舗右側の柱にに掛かっていた、「商い中」を書かれた招き猫の看板(大村さん提供)

盗まれた看板は縦約30センチ、横約10センチで黒い招き猫の形をしていた。移転を祝う関東の常連客から贈られた思いのこもった看板だった。

看板が盗まれ手書きで代用した(8日午後、京都市左京区古川町通仁王門下ル)

店主の大村明江さん(51)によると、8日午前0時半ごろに店を出た際には看板があった。開店のため、8日正午ごろに「支度中」から「商い中」にしようとしたところ、看板がないことに気付いたという。

「たまゆらん」では過去にも店頭に置いていたポインセチアの鉢が盗まれたことがあったという。大村さんは「たかが看板一つと思われるかもしれないが、店を大事にしてくれている人みんなをないがしろにされたような気分です」と話す。

手書きの「営業中」。店主は「返して」と訴える(8日午後、京都市左京区古川町通仁王門下ル)

「ただ、そっと元に戻すだけでいいから看板を返してほしい」と大村さんは訴えている。

(まいどなニュース/京都新聞・浅井 佳穂)

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