『ブギウギ』出演でインパクト残した19歳・吉柳咲良の転機 先輩女優からの言葉で変化した意識

インタビューに応じた吉柳咲良【写真:ENCOUNT編集部】

『ピーター・パン』に捧げた学生時代「夏休み中はずっと空を飛んでいた」

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』で終盤のキーパーソンとなった若手歌手・水城アユミの好演で話題を集めた19歳の吉柳咲良は、2024年の目標に「世間のイメージを壊す」を掲げながら、二十歳の節目を迎える1年を駆け抜けている。(取材・文=中村彰洋)

吉柳の芸能界入りのきっかけは、16年「第41回ホリプロタレントスカウトキャラバン」でのグランプリ受賞。12歳ながらも堂々とした芝居力を披露し、翌17年にはミュージカル『ピーター・パン』で10代目ピーター・パン役に抜てきされ、俳優デビューを果たした。

カラオケ好きだった母親やバイオリニストの親戚の影響で、物心ついた頃から音楽に触れ続けてきた。「お母さんは歌がうまくて、それに負けじと私も歌っていました。自然と歌が好きになっていって、歌手になりたいと思うようになりました」。

歌手という夢を抱きながらも、「石原さとみさんみたいな人になりたい」という憧れから、スカウトキャラバンに挑戦。オーディションで「何か歌ってみて」と求められ、アカペラを披露したことが、『ピーター・パン』への起用につながった。「後からお聞きしてびっくりしました」と思わぬめぐり合わせだったようだ。

中学1年生にして、ミュージカル『ピーター・パン』の座長という大役。「何もかもが初めてだったので、戸惑いが大きかったです」と当時を懐かしむ。同級生が放課後を満喫している中、稽古などに打ち込む日々。「反抗期の時期もありましたね」と葛藤の連続だった。

「お母さんに『宿題やりなさい!』と言われて、『やらない! 放っておいて!』みたいな(笑)。『私の苦しみなんて分からないのに、簡単に言わないで!』という感情でしたね。周りの大人の方たちは大変だっただろうなと今になって思います。周りのスタッフさんさんやキャストさん、マネジャーさん、皆さんに支えていただいたからこそ、今があると思っています」

一方で仕事に対するプロ意識は当時からしっかりと持ち合わせていた。

「座長としての責任や意識は1年目から持つように努力しました。学校を休んでしまっても、稽古に行かなかったことはなかったです。1年目から2年目、2年目から3年目と、だんだんと『ピーター・パン』という物語への理解が深まっていきました。1年目に初めての本番を迎えたとき、純粋に楽しかったんです。『ピーター・パン』という物語がすごく好きだったので、しんどいことがあったとしても楽しめていました」

吉柳は22年までの6年もの長期間、ピーター・パンを演じ続けた。「辞めたくなくて、『まだやりたいです!』と言っていたぐらいです」とライフワークの一部になっていたようだ。一方で、中高のすべてをピーター・パンに捧げたことでやり残したこともあった。

「毎年、夏はミュージカル本番だったので、夏休みがなかったんです。みんなが海や夏祭りを楽しんでいる間、私はずっと空を飛んでいました(笑)。そういった行事に参加できなかったことが、ちょっぴり寂しくもあり、うらやましかったので、去年の夏は、念願の海や夏祭りに行って、全部やり遂げました(笑)」

二十歳の抱負を語った吉柳咲良【写真:ENCOUNT編集部】

今年は改変の1年に「今年は何一つ隠さずにありのままで」

ミュージカルで活躍を続ける一方で、映画『初恋ロスタイム』(19年)ではヒロインを演じるなど映像作品にも挑戦した。

「両立は難しかったです。『ピーター・パン』をやりながら、映画の撮影をしたとき、芝居が舞台っぽくなってしまいました。監督さんからの指摘で、初めて舞台との違いに気付くことができました。2021年には学園モノのドラマに2作も出させていただいて、同級生役の方たちの演技を間近で見られたことで、いろいろな表現方法を学ぶこともできました」

自身の性格については「気分屋」と笑いながらも、「なんでもチャレンジしたいんです。できないことをできないままにすることが嫌いで、自分に納得できないことが1番嫌いなんです」と分析する。

昔は「緊張しいで臆病だった」という性格も、「認めてくれる人が増えた」ことで次第に変化していった。『未来への10カウント』(22年/テレビ朝日系)で共演した満島ひかりからもらった「そのままの咲良を面白いと思ってくれる人が絶対にこの世の中にはいるから、曲げない方がいい」という言葉も背中を押しした。

「その言葉がきっかけで、“自分を作る”ということをやめて、“好きな自分”を前に出すようになりました。意外にもそんな私を好きと言って、受け入れてくれる人たちが増えたんです」

朝ドラでの活躍など露出も急増。「ブレイク前夜」と期待されることも増えてきた。

『今年は勝負の年だよ』とたくさん言われてきました。二十歳にもなるし、頑張らなければとは思いつつ、楽しめなくなったらそれまでだと思うので、私は今年も楽しくお仕事ができればいいなと思っています。

二十歳の目標は「期待値を超えていくこと」。どの作品に出るかよりも、いただいた役にどれだけ誠意を持って、向き合って、120%を出せるか。『これぐらいだったらやってくれるだろう』という期待をはるかに超えて、驚きを与えていきたいと思っています。あとは“世間のイメージを壊す”ですね(笑)。今年は何一つ隠さずにありのままでやっていこうと思っています」

3月22日には1st写真集『Only』を発売、YouTubeで「歌ってみた動画」を披露するなど、俳優以外での活動も増えてきた。2024年は吉柳咲良の“期待値を超える”パフォーマンスに期待したい。

□吉柳咲良(きりゅう・さくら)2004年4月22日、栃木県出身。2016年に「第41回ホリプロタレントスカウトキャラバン PURE GIRL 2016」でグランプリを受賞。17年2月にミュージカル『ピーター・パン』の10代目ピーター・パン役に抜てきされ、22年まで同役を務めた。24年公開の『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』に出演。同5月16日からはミュージカル『ロミオ&ジュリエット』でジュリエット役を務める。3月22日には1st写真集『Only』(講談社)が発売される。特技は歌と5歳から習っているダンス。

○スタイリング:齋藤愛奈中村彰洋

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