『虎に翼』土居志央梨「やめちまえ!」の迫力 寅子は正反対のよねとどう向き合う?

「法律の正解とは何か?」という疑問にぶち当たり、頭を悩ませる寅子(伊藤沙莉)。『虎に翼』(NHK総合)第7話では、山田よね(土居志央梨)の後をついて行った寅子が、人生で初めて裁判を傍聴するまでが描かれる。

よねとの一悶着もあり、彼女とは距離を取っていた寅子。「明律大学女子部法科」に入学してから1週間が経ち、寅子は女子の憧れの的の華族令嬢・涼子(桜井ユキ)、最年長の梅子(平岩紙)、留学生の香淑(ハ・ヨンス)とともに“なんとなく扱いにくい一派”として一緒にお昼ご飯を食べ合う仲となっていた。だが、それは形式上だけのもの。4人でまとまったはいいものの、いまいち会話が弾まない。お互いの顔を見合わせるばかりで、気まずい空気ばかりが流れている。「梅子さん、美味しいです」と口火を切った寅子だが、梅子は「それにしてもいい天気ね」とすぐに話題をそらしてしまう。なんだかむず痒い。とはいえ、4人は仲が悪いというわけではなく、むしろ絶妙な関係性で成り立っているのが面白い。

しかし、“なんとなく扱いにくい一派”である寅子たちからも扱いにくい人物として見られていたのがよね。大きな音を立てて教室から出ていったり、授業中に眠ってしまったクラスメイトに対して、「出てけ!」と怒鳴りつけたりと、一人だけクラスで孤立していた。だが、これまでの彼女の発言から分かるのは、誰よりも女性の社会進出を望んでいるということだ。だからこそ、のんきに法学を学んでいるように見える寅子たちを軽蔑していた。しかし、寅子もまた女性の権利を向上させたいという熱い思いを持っている。いまは分かり合えていないが、近い将来、2人は切磋琢磨し合う関係性になりそうな気がする。

ある日、家に帰った寅子は帝都新聞に自分の発言が載っていることを知る。寅子の発言が曲解されているだけではなく、女性を蔑視した内容が掲載されており、寅子は腹を立てる。新聞記者・竹中(高橋努)の表情からして、何やら胡散臭いとは思っていたがやはり。だが、当時の世論的にはどちらかというと、竹中の主張のほうが一般的だったのだろう。涼子、梅子、香淑の3人もどこか諦めているようにも見えた。

●笹山(田中要次)と出会い、傍聴控所へと案内される寅子(伊藤沙莉)

そんな時、教室の外から喚き声が聞こえてくる。泣き崩れていたのは女子部の一期生である中山千春(安藤輪子)。弁護士資格取得を女性にも認める法改正が今回もまた議会で通らなかったというのだ。「そんなことだろうと思った」と諦めている梅子だが、そんな周りの雰囲気に納得がいっていなかったのは寅子。

落ち込んでいる中山に対して、寅子は「次(の議会)は分からないじゃないですか」と励ますと、その状況を見ていたよねが「全員うっとうしい! やめちまえ!」と叫び、学校を飛び出してしまう。そんなよねを寅子は無意識に追いかけると、たどり着いたのは東京地方裁判所だった。おそるおそる裁判所に入った寅子は、傍聴マニアであり、「笹寿司」の主人で寿司職人の笹山(田中要次)と出会い、傍聴控所へと案内される。

「法廷にいざ参らん」

思いがけず裁判を傍聴することとなった寅子。本物の裁判に触れた寅子は何を感じ、何を思うのか。
(文=川崎龍也)

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