ケルドン・ジョンソン(サンアントニオ・スパーズ)インタビュー——役割の変更にも「エゴを捨てて求めらていることを実行している」

3月25日、サンアントニオ・スパーズがホームのフロストバンクセンターで、フェニックス・サンズとの接戦を104-102で制した直後、興奮さめやらぬままのケルドン・ジョンソンがインタビューに応じてくれた。

ジョンソンは2019年にドラフト29位でスパーズに指名され、今シーズンで5シーズン目となるスモールフォワード。今シーズンは、4月6日時点で平均15.8点、5.5リバウンド、2.9アシストのアベレージを記録している。ビクター・ウェンバンヤマの獲得を機に大きく躍動しようとしているスパーズの中で、どんな思いでプレーしているのか。若きベテランの言葉を聞こう。

まだ24歳ながら、すでにNBAで5年のキャリアを持つケルドン・ジョンソンはリーダー格としてチームをけん引する存在だ(写真/©Ronald Cortes/Getty Images)

弟分たちを励ます“若きベテラン”KJ
——今日はワイルドな試合の勝利おめでとうございます。第3Q終盤には貴重な3Pショットを2本沈める場面もありました。今の心境はいかがですか?

とても気分は良いよ。少し体には痛い箇所があるけど、82試合のシーズンだからこういう時期もある。今日はチームとして勝てたので、大きな意味がある。僕のチームメイトは素晴らしい活躍をしたし、自分自身も役割を果たせた試合だった。

——今シーズンのアップダウンについて話を聞かせてください。開幕直後はフェニックスでのアウェー2連戦を勝利するなど3勝2敗のスタートでした。そこから18連敗を喫し、今は16勝56敗のレコードです。

とにかくポジティブな気持ちでいることを心掛けているよ。僕たちは毎試合成長しようと努力としている。若いチームだし、長いシーズンなので、良いときも悪いときも経験するけれども、堅実に成長することを意識している。

——良いときも悪いときも経験するということですが、このチームが不和になることなく堅調な関係でいられる理由はありますか? 昨シーズンも22勝60敗でしたが、傍からチームを見ると選手同士の関係はとても健全だったように思えます。

それはチームが皆家族であるという根底があることが理由だ。選手同士は皆兄弟だと思っているし、スタッフとも家族だと思って接している。常にお互いをサポートする姿勢があるし、皆お互いが成功して欲しいと強く思っている。決して簡単なことではないけど、お互いを助け合おうという意識がとても強い。

——今チームにおけるご自身の役割について教えてください。年齢的には24歳と若いですが、スパーズで5シーズン目となり、ややベテランの領域に入ってきているように見えます。

そうだね。若い選手を励ましたり、あるいは自分に限界を作らないようにコンフォートゾーンから出るよう働きかけたりしているよ。プライドを持ってそういった行動をしているから、自分の目で選手が育つ姿を見るととてもうれしいよ。

——ちなみに最近は試合前にスターティングラインナップが紹介された後に、チームメイトにウォームアップシャツを破られる新しいルーティンが見られますが、これはどういった経緯で生まれたのでしょう?

これはある日突然起きたんだ。それから継続している。今では皆が参加してくれるし、毎試合違う選手のシャツを破っている。とてもイケてるだろう(笑)

——今シーズン、どのように自分の新しい役割に適応しているのか教えてください。昨シーズンはチームのリーディングスコアラーでしたが、ドラフトでビクター・ウェンバンヤマを指名したり、デビン・バッセルがスターとして頭角を現してきたり、ロスターにも動きがあり、これまでとは異なった役割を求められています。

アップダウンはあるよ。タフだと感じたときもあった。ただ、それができてこそプロフェッショナルだ。チームが成功するためには、自分のエゴを横に置いて与えられたどんな役割にも適応する。昨シーズンと今シーズンは別物だ。昨シーズンは楽しかった。今シーズンは自分の役割が変わったけれども、良いチームメイトに恵まれているから新しい役割にも順応しやすいよ。難しい時期でも、チームメイトには皆自分の味方をしてくれる。

新たな役割にもジョンソンは迷いなく適応し、奮闘を続けている(写真/©Ronald Cortes/Getty Images)

——シーズン中にスタメンではなく、ベンチからの試合出場になったことについてはどうでしょうか? 去年の夏にサンアントニオの地元のライターからベンチ出場の可能性を聞かれて、「チームが必要とするのでれば何でも受け入れる」と答えていましたが、「受け入れる」と言葉で言えても、実際にそれを受け入れることは簡単ではないと思います。

そんなことはなかったよ。僕は勝ちたいし、負けん気も強い。でも、自分のエゴを捨ててチームメイトが自分に求めていることを実行する。コーチ陣やチームメイトたちを信用しているし、彼らが僕に何を欲しているかは理解できている。浮き沈みもあるけど、楽しんで自分の仕事を成し遂げている。

ブライアント・スティス、アレン・アイバーソンが手本だった——ドラフトでは29位でスパーズに指名され、今シーズンで5年目を迎えましたが、チームは今のあなたを形成するのにどのようにサポートしてくれましたか?

オースティン・スパーズでの経験は貴重だった。プロフェッショナルとは何かを学ぶことができた。Gリーグがどれだけ育成に重要なのか気づいていない人もいるけど、未熟だった自分にとっては有益な時間だった。19歳でドラフトされて、オースティンでプレーをして認めてもらえたからこそ、サンアントニオでプレー機会を得たときには準備は整っていた。

——幼少期の話も聞かせてください。バージニア州の中でも田舎町(サウスヒル)で育ったと聞きましたが、お手本にできるようなバスケットボール選手などはいたのでしょうか?

小さい街だったよ。この街で唯一といっていいかもしれない有名選手はブライアント・スティス(1992年のドラフトでデンバー・ナゲッツから13位で指名され、2002 年までNBAでプレー)だった。彼のことはとても尊敬していたし、彼が主催するバスケットボールキャンプに毎年参加していた。彼を見て、彼の話を聞いていくうちに、自分が達成したい夢も叶えられるんじゃないかと思うようになっていた。あとはアレン・アイバーソンも尊敬していた。この2人が、僕が子どものころに大きな影響を与えてくれた選手だ。

——中国のブランドと契約を結んでいて、昨年の夏は中国ツアーも慣行しました。アジア文化と触れてみた感想を教えてください。

中国ツアーは最高だった。僕の人生で最高のひとときだったと言える経験の一つだ。色々な人に会えたり、異文化に触れたりできた。とても歓迎もしてくれて、家族のように接してくれた。今年の夏もまた中国に行く予定だから待ち遠しいよ。

——最後に2021年にオリンピックで来日したときのことを聞かせてください。当時はコロナウィルスの影響で行動に制限があった時期ですが、何か日本について印象に残っていることはありますか?

東京は今まで訪れた街でも一番綺麗な街の一つだ。また日本に行って文化を楽しみたい。限られた機会だったけれども、日本の人との交流は素晴らしかったし、また経験したいと思っているよ。

東京2020オリンピックでアメリカ代表の金メダル獲得が決まった後、星条旗を身にまとい笑顔のジョンソン。東京は美しい思い出の地となっているようだ(写真/©FIBA.Tokyo2020)

この企画は、スパーズのスーパーファンとして知られる小谷太郎さんが立ち上げた「Paint it Silver & Black!」プロジェクトの一環として小谷さんの全面的協力の下でスパーズ周辺の様々な話題を取り上げています。不定期ながら随時楽しい企画をお送りしていきますので、乞うご期待!

© 日本文化出版株式会社