組織の命令に逆らえないサラリーマンの悲哀を描く「七つの会議」紅麹問題でも似たような現状が!?

野村萬斎

【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。小林製薬の紅麹サプリが大きな問題となっていますね。小林製薬を巡っては、紅麹の成分を含むサプリメントを服用した人が腎臓の病気などを発症。これまでに5人が亡くなり、計212人が入院するなど甚大な健康被害が発生しています(8日現在)。原因究明が急がれますね。

どのような企業でも不祥事は起こり得るものです。そこで今回は、企業の闇と秘密を描いた2019年公開の映画「七つの会議」を紹介したいと思います。

野村萬斎さん演じる主人公は、中堅メーカーのぐうたら係長。会議で居眠りをするなどひょうひょうとした毎日を送っていたんですが、ある日起きたパワハラ騒動で不可解な人事が発生。そこから明らかになっていく会社の闇に立ち向かっていくというお話です。

この映画では、サラリーマンの悲哀が描かれていると思うんですよ。資本主義社会では、サラリーマンって月の給料がすべてですよね。誰だって保身したい気持ちがあるし、自分自身の奥さん、子供を食わしていかないといけない。だから、組織の方針に逆らえないこともありえます。悪事だとわかっていても、自分の首が飛ぶから手を染めなければならない場面もあるかもしれません。立場が弱いゆえに避けられない不正、それは果たしてその当人の悪なのか、と非常に考えさせられます。

今回の紅麹問題、原因がいまだ明らかになっていませんので、小林製薬側にどれほどの過失があるのかはまだ分かりません。ただ、一点指摘されているのは初動対応の悪さです。報道によると、小林製薬に最初にサプリ摂取の健康被害が報告されてから同社が消費者庁に報告するまで約2か月を要しています。この2か月を小林製薬は原因究明にあてていたと説明しましたが、まず情報公開と製品の自主回収を進めるべきだったとの指摘がなされています。真相はもちろんわかりませんが、社内でも「まずは公開・回収を」との考えや声は当然あったんじゃないかと思うんです。その背景には、やはりサラリーマンとしての立場の弱さ、長いものに巻かれるしかない現状があったのかもしれません。

企業の不祥事はなぜなくならないのか、その根本と僕たちはいま一度向き合わねばならないように思います。サラリーマンにとっての正義とは何なのか、今作を考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

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