『366日』第1話 平成20年の「ベタドラマ」を完全再現? 日曜劇場チームが月9を撮ったら

8日スタートのフジテレビ月9は『366日』。HYの同名スタンダートナンバーに着想を得たラブストーリーだそうです。「こわい~くらぁ~い♪」って、16年前、平成20年の曲だそうですよ。時がたつのは早いものです。

主演は『R-1グランプリ』(同)のMCでおなじみの広瀬アリスと、千葉真一の息子かつ真剣佑の弟である眞栄田郷敦。ゴードン。いい名前。

脚本に清水友佳子、演出に平川雄一朗という完全にTBSな布陣で、ある意味「もしも日曜劇場が月9を撮ったら?」という「五木ひろしがF1カーだったら?」みたいな企画モノ作品のようにも見えますが、果たしてどんなドラマになっているのでしょう。振り返ります。

■こ、これは……「ベタドラマ」!?

むかし、『くりぃむしちゅーのたりらリラ~ン』(日本テレビ系)で、「ベタドラマ」というコーナーがありました。古今東西のドラマの定番シーン、いわゆる「ベタ」をふんだんに盛り込んだドラマを作ってスタジオのみんなで展開を当てようという、とっても楽しいテレビだったんですね。

つい先日その「ベタドラマ」のリバイバル特番が放送されたのも記憶に新しいところですが、今回始まった『366日』は冒頭からベタドラマを上回るベタドラマの様相でした。

まず主人公であるアスカ(広瀬)のキャラクターですが、音楽教室の受付で働いている28歳の普通の女性です。普通であることに薄々コンプレックスを抱えつつも、他人に期待したら絶望するから期待しないわという平穏無風第一主義で生きている普通の女の子。

いい感じの男性がレッスンに来ると、周囲から「あんたもいい年なんだから、あの男つかまえちゃいな(意訳)」といったドストレートなハラスメントを受けつつも、後輩の残業を笑顔で引き受けちゃうなど、平成20年からタイムスリップしてきたようなテンプレート通りの造形です。

そのアスカが高校時代に思いを寄せていたハルトは、野球部でサヨナラホームランを打っちゃうような、こちらも絵に描いた餅がオーブントースターから飛び出したようなイケメンくん。アスカは思いを伝えられず、もう10年も卒業式に渡すはずだったマフラーを保管していました。

そんなある日、2人の通っていた龍ケ崎の高校が取り壊しになるとかで、同窓会が開かれることに。ハルトは来れないそうですが、アスカは東京での唯一の友達であるリコ(長濱ねる)に誘われて参加することにしました。

同級生たちの現況もまた、見事にベタです。

社会人野球、冴えない小劇場、妊娠6カ月、同窓会に顔を見せない外資系コンサルタント。ちなみにアスカは介護職に就きながら理学療法士を目指しているリコにも、妊婦さんになった同級生にも、ちゃんとコンプレックスを持っています。何しろ平穏無風第一主義ですからね。夢とか未来とか、ちょっと、無理なんです。

で、誰かがベタに倒しちゃったコップの水を浴びて廊下に出たアスカは、ハルトが書いた壁の落書きを発見します。「行くぜ!!甲子園!!」。そこに現れるハルト。『たりらリラ~ン』なら全問正解できそうなベタ展開が続いていきます。それでも演出は日曜劇場ですから、画面はそれなりに「もつ」んです。

■また悲劇ですかぁ?

1月クールの月9『君が心をくれたから』は視聴者から涙を搾り取ることだけを目的とした超怖くて超暗い精神的グロドラマでしたので、こうしたほほえましいベタなラブストーリーは歓迎するところでもあったのですが、『366日』でもまた悲劇の予感が漂ってきました。

10年越しに素直に思いを伝え合い、無事に付き合うことになったアスカとハルトでしたが、初デートの日にハルトが事故にあって救急搬送されてしまいます。これも、木にひっかかった赤い風船を取ろうと腕を伸ばしたそこらへんの少年が陸橋の欄干から落ちそうになるのを、ハルトが身を呈して助けた結果というベタ展開。赤い風船ですよ。せめて黄色や緑であれ。

第1話の最後にそういう展開があることは情報として出ていましたので予想外というわけではないけど、そういう悲劇のバックに「こわい~くらぁ~い♪」と「366日」が流れるわけです。

そりゃいい曲ですけどね、もういいかげん、怖い暗い月9は勘弁してほしいなぁと思いながら次回を待ちましょう。ホントに、結果として「もしも日曜劇場が超ベタな月9を撮ったら?」という企画を本気でやったらどうなるかが見られる作品になるかもしれないし。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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