33歳で保有資産2千億円…M&A総研社長は何者?フォーブス長者番付入り

M&A総合研究所の公式サイトより

米誌「フォーブス」は保有資産額が10億ドル(約1500億円)を超える「ビリオネア」を調査し、2024年の世界長者番付を発表した。そのなかで弱冠33歳のM&A総合研究所の代表取締役社長、佐上峻作氏(推定保有資産額:19億ドル/約2900億円)がランクインしていることが話題を呼んでいる。佐上氏とはどのような人物なのかを追ってみたい。

毎年恒例のフォーブス発表の世界長者番付。今年の1位はルイ・ヴィトンやティファニーを傘下に持つ仏ブランド企業LVMH会長兼CEOのベルナール・アルノー氏(2330億ドル/約35兆3000億円)。このほか、上位には同ランキング常連組の米テスラCEOのイーロン・マスク氏、米アマゾン・ドットコム元CEOのジェフ・ベゾス氏、メタCEOのマーク・ザッカーバーグ氏が今年も顔を揃えている。日本人の1位はファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏。番付全体では29位で推定保有資産額は428億ドル(約6.4兆円)。2位はソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏で全体では51位だった(327億ドル/約4.9兆円)。このほか、日本人としてはキーエンス創業者の滝崎武光氏、ユニ・チャーム代表取締役の高原豪久氏、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄氏、ドン・キホーテ創業者の安田隆夫氏、「すき家」を展開するゼンショーホールディングス会長兼社長の小川賢太郎氏、しまむら創業者の島村恒俊氏などがランクインしている。

AI・DX活用と完全成功報酬制の料金体系

そのなかで注目されているのが、全体で1694位、日本人では17位にランクインした佐上氏だ。推定保有資産額は19億ドル(約2900億円)であり、コナミホールディングス創業者の上月景正氏やZOZO創業者の前澤友作氏、サントリーホールディングス会長の佐治信忠氏などよりも多い金額となっている。

1991年生まれの佐上氏は神戸大学農学部在学中からデザイナーとしてビジネスを手掛け、卒業後はエンジニアとしてマイクロアドに入社し、広告配信システムのDSPのアルゴリズム開発に従事。この傍ら個人で男性用化粧品を扱う会社を創業し、大手PR会社ベクトルに株式譲渡。その後、2018年にM&A総合研究所を設立し、2022年には創業からわずか3年9カ月で東京証券取引所グロース市場へ上場を果たした(23年8月に東証プライム市場へ区分変更)。

M&A仲介サービスを手掛けるM&A総研の特徴は徹底したAI・DX活用による業務効率化と、業界では珍しい完全成功報酬制の料金体系だ。売り手と買い手のマッチングに自社独自に開発したAIシステムを活用し、業務を大幅に効率化。また、M&Aでは売り主である譲渡企業が仲介会社に着手金などを支払う形態が一般的だが、同社は着手金や月額報酬などを取らず、成約した場合のみ料金を受け取る。また、成功報酬額は総資産額ではなく譲渡代金に基づき算出するため、料金が明瞭となっている点も特徴だ。

同業出身者だけでなく異業種からも幅広く人材を採用し、社員の高額報酬でも知られており、23年9月に転職エージェント・リメディのサイトに掲載された佐上氏へのインタビュー記事によれば、年収モデルは入社1年目で900万円、2年目で2260万円、3年目で3640万円だという。

「M&A仲介専業会社の大手は報酬が高く、M&Aキャピタルパートナーズも平均年収が3000万円を超えている。そのため高額報酬を用意しないと優秀な人材を確保できないという面もある」(金融業界関係者)

売上高営業利益率は50%を超え、既存大手の日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズを凌駕(りょうが)しているとされるが、M&A総研の強みについて別の金融業界関係者はいう。

「佐上氏がエンジニア出身というのが最大の強みだろう。M&Aの世界は扱う金額が大きい割にDX化が遅れており、売り手と買い手のマッチングが人力頼みの部分が強く、成約に至るまでの書類の作成・やりとりの量も膨大。その部分にAIとDXを導入して徹底して効率化することでコストを抑え、完全成功報酬制を実現できている。そのシステムも自社で独自開発しているということなので、競合他社が追随できない強みとなっている。佐上氏がM&A業界出身ではないため業界の常識にとらわれずに斬新な取り組みを行える点も強みだろう。また、高収益企業として知られるキーエンス出身者が多いと聞くが、彼らのノウハウも全社的に浸透して“より稼ぐ体質”にブラッシュアップされているのでは」

(文=Business Journal編集部)

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