スイスの気候変動対策は不十分、欧州人権裁が判断 熱波の危険性

Gloria Dickie Kate Abnett

[ストラスブール(フランス) 9日 ロイター] - 欧州人権裁判所は9日、気候変動に対する政府の取り組みが不十分であり、熱波に際して死亡する危険性があると主張していたスイスの高齢女性の訴えを支持する判決を下した。

2000人以上の女性による訴訟を巡る今回の判断は、増えつつある人権侵害を基にした気候変動訴訟に裁判所がどのように対処するかの先例となり、欧州全体などに影響が広がる可能性がある。

欧州人権裁のシオフラ・オレアリー長官は、スイス政府が気候変動に十分な対策を講じなかったことにより、個人の生活面で人権が侵害されたと指摘。「国レベルの温室効果ガス排出制限を『カーボンバジェット(炭素予算)』などを通じて定量化しなかった」などを挙げた。

控訴はできず、今回の判決が政府に対し、排出削減に向けた一段の行動を迫る可能性がある。

世界的な市民運動「Avaaz」は、気候変動訴訟にとって今回の判決は画期的と表明した。

一方、欧州人権裁は、同様の別訴訟2件については退けた。ポルトガルの若者6人が欧州32カ国の政府を訴えたものと、フランスの元市長が仏政府を訴えたものだ。

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