旅立ちの春です。東京や名古屋へ向かうのに高速バスが欠かせない長野県の南信地域。年度末は進学や就職で、都会に出る若者の利用が増えます。3日間、飯田市の停留所で、出発する人、見送る人に話を聞きました。
■親元を離れ、初めての一人暮らし
3月25日―。
高速バスが滑りこむ「伊賀良」停留所。
中心市街地からは3つ目、駐車場と待合室があり、利用者が多い停留所です。
特に3月は、通常の月の4割増し、1日300人ほどが乗車します。
バスを待つ飯田市の吉野さん親子。
賢太さん(18)は、この春、高校を卒業、名古屋の大学に進学します。
名古屋の大学へ・吉野賢太さん(18):
「引っ越しの準備で名古屋に向かいます。ちょっと寂しい気持ちもあるけど新しい生活がワクワクする感じがします」
賢太さんは3人きょうだいの長男。
親元を離れ、初めての一人暮らしです。
名古屋の大学へ・吉野賢太さん(18):
「人間関係とか、うまく築けるかなと、一からなのでという不安はありますね」
母・かおりさん(49)はー。
母・かおりさん(49):
「長男が行くのは寂しいですね。初めての子だったのでいろいろ私も手探りでやってきて一緒に成長できる部分もあったかなと思います。人間関係うまくいけば何でもスムーズにいくと思っているので、今までお友達に恵まれてたので、またそういうお友達に出会ってくれればなと思ってます」
一緒に名古屋へ、親子で引っ越しの準備です。
■親に感謝 旅行をプレゼントしたい
3月26日―。
雨を避けてバスを待つ春から新社会人の小笠原輝星さん(18)。元高校球児です。
愛知の企業に就職・小笠原輝星さん(18):
「練習試合だと、クリーンナップ打たせてもらったが、公式戦はあまり出られなかった」
小学2年から野球を始め高校は岐阜の強豪校へ。親元を離れ、寮生活を送りながら練習に励んできました。
愛知の企業に就職・小笠原輝星さん(18):
「頑張った方ではあるのですが、あと一歩みたいな。甲子園に行きたかったのですが、大垣日大という岐阜の強豪校に負けたのでそこが悔やまれるけど、自分らしさで頑張ったので良かったです」
小さい頃から打ち込んできた野球は高校と共に卒業ー。
4月から愛知の自動車部品メーカーで働きます。
愛知の企業に就職・小笠原輝星さん(18):
「お母さんの偉大さは感じましたね。寮なので、自分の周りのことは全部自分でやって。人一倍お金がかかっているので、感謝しかないですね。ある程度お金を稼げるようになったら、(両親に)旅行でもプレゼントしたいです」
■仲間6人で遠出を計画
出発前から盛り上がる女子高校生の6人組。
市内の同じ高校に通うクラスメイトで、名古屋へ日帰り旅行です。
高校1年・若林詩華さん:
「スイーツパラダイスに行って、大須商店街に行きたい」
高校1年・松山穂風さん:
「食べ歩きとか、食べ放題が楽しみ」
これまでは近場で遊んできましたが、新型コロナの感染が落ち着いたことから、春休みの遠出を計画しました。
高校1年・熊谷心菜さん:
「(コロナの影響が)完璧にないわけではないのですが、中学の時よりは全然なくて楽しめています。行動範囲も広がるので、みんなといろいろなところへ行きたいなと思います」
後日、「名古屋旅行」の写真が届きました。
■寂しさも…子育てはひと段落
青空が広がった3月27日。
名古屋行きのバスを待つのは飯田市の近藤さん親子。
岳斗さん(23)は新潟の大学を卒業、4月から神戸のIT関連の会社で働きます。
神戸の企業に就職・近藤岳斗さん(23):
「(希望の就職先に就けたんですか?)自分の納得する形で、就職活動は終えることができました」
3人のきょうだいを育てた母親の美佐子さん(60)。
末っ子の岳斗さんの就職で、子育てはひと段落です。
母・美佐子さん(60):
「就職決まって、ほっとしてやっぱりうれしかった。親としても肩の荷がおります。寂しさもありますけど、これからに期待したい」
■一人になってどう変わるか楽しみ
スーツケースを携えた飯田市出身の牧内咲和さん(18)。
新宿行きのバスを待っていました。
高校を卒業、都内の大学へ進学します。
都内の大学へ・牧内咲和さん(18):
「春から東京の学校に通うので、きょうから行って一人暮らしになる感じ」
都内の大学へ・牧内咲和さん(18):
「おじいちゃん、おばあちゃんと3世帯で一緒に住んでいたので、人数多くて、だから一人になってどう変わるのかなというのが楽しみ」
都内の大学へ・牧内咲和さん(18):
「(寂しかったりしますか?)まだそこまでないんですけど、行って何日かたったら寂しいと思うんじゃないかと思います。おばあちゃんがすごく寂しがっていたので、ゴールデンウイークに帰って来るかなと思いながら、『またね』と言ってきました」
■“おばあちゃん孝行”を
こちらは飯田市の宮毛隆成さん(18)と祖母の米澤洋子さん(69)。
先日、高校を卒業した宮毛さんは「理容師」になるため名古屋の専門学校へ。
理容師を目指し専門学校へ・宮毛隆成さん(18):
「お母さんが美容師なのですが、それを見ていたら、そっち系に行きたいと思って。よくおばあちゃんの家に行くのですが、ご飯とか出してくれたり、もう感謝です。(おばあちゃんにどう恩返ししたいですか?)髪を切ってあげたいですけど、頑張って一人前になります」
働く両親に代わって孫を見送りに来た祖母はー。
祖母・米澤洋子さん(69):
「田舎と都会と違う面が多いのでいろいろとそこらへんも心配です。(おばあちゃんの髪を切りたいと話していたが?)ぜひ!モデルというか最初になってやりたい」
祖母・米澤洋子さん(69):
「じゃあね、行ってらっしゃい」
祖母・米澤洋子さん(69):
「(どうでしたか、お孫さんの様子見て?)頑張ってこられるなと思った。手先が器用だし、そういうのをのばしていって、みんなに喜んでもらえるような仕事ができるといいかな」
希望や不安、期待が交錯する高速バスの停留所。
今年も旅立ちの春を迎えています。