髭 -「コンセプトなし」がコンセプト! 下北沢SHELTERで9カ月連続マンスリーワンマンいよいよ始動!

「コンセプトがないライブを昔みたいにやる」っていうものがコンセプト

──9カ月連続マンスリーワンマン開催という発表をされたときにとても驚いたのですが、まず、どういう流れで決まった企画なんですか?

須藤:バンドでミーティングをしているときに、2023年の20周年が終わって「21年目のモチベーションてなんだ?」ってなって。20周年てすごい大っきなモチベーションじゃないですか。去年アルバム出したり、今まで髭に参加したメンバー全員9人でライブしたりして、21年目も自分達でモチベーションを下げないためにやりたいこと何かね? っていう中で、落ち着いたところが今回のマンスリーでしたね。

──タイトルの『TIKA』は、SHELTERが地下だからですか?(笑)

須藤:そうそう(笑)。SHELTERと僕たちとのつながりもあるし、SHELTERがちょうどいいんじゃない? って。

──内容が全く発表されていないのでどういうライブなのかみなさん気になっているところだと思うのですが、コンセプトなどあるんですか?

須藤:結構今までの髭って、特に去年なんですけど、わりとどのライブもコンセプトがあったんですよね。20周年ライブであればこれまでのリード曲を網羅しようとか、NEWアルバムツアーとなればやっぱりNEWアルバムがメインになるし。去年だったら『サンシャイン』と『TEQUILA! TEQUILA! the BEST』の再現ツアーだったり。逆に、ただただやりたい曲をやるっていうライブをやってないなっていう話になって。そういう「コンセプトがないライブを昔みたいにやる」っていうものがコンセプトというか。

──なるほど。

須藤:これだけライブがあるから、今メンバーでセットリストを持ち回ろうかって言ってるんですよ。たとえばこのライブは宮川(トモユキ)でいいんじゃないのとか、このライブは斉藤(祐樹)でいいんじゃないのみたいなのが4〜7月ぐらいだと思うんですよね。いつの時期の曲をやってもいいみたいな。一周して8月からは、ライブをやっていく中でコンセプトが見つかっていくと思うんですけど。たとえば20周年目以降に出来た僕たちの新曲とかを試していく場になったり。

──昔の『CLUB JASON』や『Golden Raspberry Award』みたいに明確なコンセプトを掲げるのではなく、もっと自由にやるっていう感じなんですね。

須藤:そうですね。今日あの曲聴けたとか、何かコンセプトがあったからこそ割を食ってたやんなかった曲たちとかも、メンバーの視点から各曲バラつきがでてくるだろうから、そういうのを楽しみながら。それは純粋に面白そうだなって。

──もう4月のセットリストは決まっているんですか?

須藤:今回は「斉藤が年男だからいいんじゃない?」みたいな感じで(笑)、斉藤が組んだのをこの間リハーサルでやりましたね。

──お客さんのリクエストが反映されたりもするんでしょうか?

須藤:自分の番が回ってきたときはそんなことを俺は考えてて。SNSとか使って、たとえば全曲とは言わずとも、「何か聴きたいのある?」って投げかけてみようかなって思っていたりもしています。何月に自分のセットリストが回ってくるのか分かんないですけど。

──これだけ日程があればお客さんも好きなときに見に行けますよね。

須藤:そうそうそう。それもあって。なんか自由に見に来てもらって。全部週末だし。8月も月曜日なんだけど祝日なんで、楽しんでもらえたらなって思ってます。

一見まろやかなんだけど、どんどんパンク、オルタナティヴになっていってる

──去年のアニバーサリーを終えての今の髭のモードをお聞きしたいです。去年『XX』というアルバムを出されて、多幸感があったり、ガレージロック、ベッドルーム、カントリー、ダンスミュージックなど色んな曲調がありながらまろやかな聴き心地で、バンド愛と音楽愛に溢れている20年間の髭が詰まった今の髭のアルバムだなと思ったのですが、アルバムツアー、2マンツアー、再現ライブなど、アニバーサリーイヤーを一年間やりきって今どうですか?

須藤:やっぱりすごく「やったな」っていう感じがしてます。1月は自分の中でソロのGATALI(須藤寿 GATALI ACOUSTIC SET)があったり、2月はフルカワ(ユタカ)君との毎年恒例の誕生日で弾き語りやったりとか、全く別のことを1月、2月ってやってて、ちょうどよかったなっていうか。それですぐ髭のこととかを考え始めたら盛り上がらなかったと思うんですよ。メリハリないなっていうか。20周年でしっかり打ち上げたのに「さあ、来月から何していこうか?」っていうのはちょっと思い浮かばないっていうか、ちょっと置こうっていうのがあったんで。久しぶりに3月に入ってからメンバーと会い始めてリハが始まってすごい新鮮に感じられました。その休みの間に何か髭のことを考えていたかっていうと、意外と何も考えていなくて。それが個人的には、これから4月からまた髭に戻っていく、また会うの楽しみだなって思えるモチベーションになりました。

──ここまでキャリアを積まれてきて、その時々のサウンドの趣向や変化はもちろんあるんですけど、髭のスタイルというのは何となく出来上がっている中で、去年のアニバーサリーをやり尽くして何か気持ちの変化などありましたか?

須藤:髭って、まあどんなバンドもそうだと思うんですけど、変わらないようでいて初期のアルバムと比べるとだいぶ違うところに来てるっていうか。特に自分の場合は随分違うところに来たなって気がしているんですよね。だから来年とか再来年とかに向けてまたアルバム作りたいと思っていて、そのときに世の中がどういうふうなスタイルで音源を発表している世界になってるかちょっと分かんないんだけど、『XX』のようなまま変わり続けていくんだろうなって気がしていて。今思ってるのは、もう一回ギターロックやりたいなみたいな。曲書いてみたら「全然そんな曲じゃないじゃん」みたいなこともありえそうだけど。変わってしまうことこそが髭っぽいんじゃないか、僕っぽいんじゃないかって。今は考えすぎず、純粋に一回空っぽにしてる状態を作ったほうがいいんじゃないかな〜って思ってるところなんですよね。あんまり考えすぎると凝り固まっちゃうし、「髭ってこうだったよな」って思っちゃいそうで。それをバンドが長くなってきたら取り払わないと、自分の場合はつまんなくなっちゃうっていうか。「それやんなきゃいけないんだよな」ってなっちゃわないように常に新鮮に保っていたいなって思っています。

──ここ数年、周年を迎えるアーティストが多いですが、清春さんが今年30周年で、一年間ほぼ毎週ライブをやるというとんでもないスケジュールを組まれていて。LUNA SEAも4枚のアルバムの再現ツアーを過去最大の日程で組んでいて、2組ともライブのMCで「残り時間」とか、「今やりたいことを先延ばしにはできない」という話をされるんですね。髭とは世代もスタイルも違うけど、キャリアを積み重ねてどんどんシンプルになってきてるという意味ではすごく共通していると思うんですよ。周年を迎えてそういう立場に来たバンドがこれからどういうモードになっていくのかというところで、清春さんは、新しいものを作りつつファンに還元というのが今年一年のツアーだと思うんですけど、2024年の今の髭はどういうモードなんでしょうか?

須藤:今の例に挙がった先輩方の話を聞いただけでもすごくシンパシーを感じる部分がやっぱりありますね。いたずらにとげとげしい感じに戻すことは、出来そうで出来なくて。上っ面だけをとげとげしいものにしてみようかっていうのはつまんなそうだし。今の自分を余すところなく表現したいってなったときに、やっぱりいろいろつながるなと思うんですけど、『XX』ではアンサンブルの調和とかを考えたりしたんです。結果的に溶け合うようなアレンジメントにしたいなって。ファンに還元したいっていう、多分20代のときとかは、そう思ってたとしてもそんなこと言わないだろうし、本当にもっととげとげしたものだったかもしれないし。やっぱり人間だから、自然と角が取れて、川辺の石ころと一緒で、どんどん丸みを帯びていくっていうか。それが悪いっていうよりかは円熟味みたいなもので。その強さみたいな、残った部分だけが本当の自分の芯になっていくから、一見まろやかなんだけど、すごくそこの部分が自分のアーティストとしてのパンクな部分でもあると思うから。そういった意味で言えば、どんどんパンクにはなっていってると思うんですよね。どんどんオルタナティヴになっていってるというか。オリジナリティがどんどん高まっていってると思うんですよね。

──分かります。

須藤:だから、そういったものを正直にみんなに届けるってなると僕の場合は、ライブに来てくれるファンにとってもとげとげした気持ちじゃなくなってくるっていうか。やっぱり時間が経ってくればくるほど、自分の表現の場だと思っていたものが、ファンからもらっているものでもあるんだなっていう気はすごくしてきていて。そうじゃないと全く成立していないんだなっていうか。そういった意味で言うと、自分たちをすごく大事にしてくれている人たちとどう共有するかっていうことはすごく考えるようになってきましたね。そういう気持ちが少なからず今後の音源にもフィードバックされていくのかもしれないし、出来上がったものを聴いたら「全然ちげーじゃねぇかよ」ってなるかもしれないですけど(笑)。

SHELTERには2000年代初期の思い出がいっぱいある

──前回SHELTERに出演されたのは、2021年のSHELTER30周年のときですよね。SHELTERは昔から出られていると思いますが、印象に残っていることなどありますか?

須藤:斉藤と宮川が同じ大学のサークルでバンド組んでたんですよ。そのときに、SHELTERに出れたらいっぱしのバンド感がやっぱりあって。昼間のオーディションを彼らが受けて「須藤、お客さんとして観に来てくれない?」みたいな感じで、観に行ったんですよ。自分はそのとき18、19歳ぐらいでバンドやっていなくて、SHELTERってステージとの段差があるじゃないですか。見上げる感じで見てたときに彼らが輝いて見えたのは覚えてますね。オーディション通ったのかな? 通んなかったのかな? 自分のことじゃないんでちょっと分かんないんだけど(笑)。すげーなって思って。それから彼らのバンドのボーカルが抜けて、宮川君と僕が中学生から同級生だったから、「須藤がいるよ」っていうことでボーカルとして呼んでもらえたんですよ。それで、髭として活動し始まった頃に『活火山』ていうイベントがSHELTERであって出たら、大トリがMO'SOME TONEBENDERで。あとDOPING PANDAがいて。MO'SOME TONEBENDER見て「すっげーバンドがいるな」って。知らなかったから。彼らもそのとき福岡から遠征に来てて、まだ東京に住んでなかったと思うんですよね。すっごいなと思って。それもSHELTERだったんで、そういう2000年代初期の思い出がいっぱいあります。

──『ぼっち・ざ・ろっく!』の影響で最近、海外の観光客が聖地巡礼でライブ見に中に入ってくるんですよ。だから全然知らないバンドのはずなのに、海外ノリですごい盛り上がるんですよね。

須藤:あー! 映画館で見た! 宣伝で。俺『ぼっち・ざ・ろっく!』の内容知らなかったんだけど、死ぬほどSHELTER見てるから「あっ! これSHELTERじゃん!」て分かって(笑)。俺だけはこれがどこがモデルか分かってるみたいな(笑)。じゃあ、いいときにやるかもしんない。ヤバイ。

──今年のマンスリーワンマン以外の予定は決まっていますか?

須藤:9月に『それではみなさん良い旅を!』と『QUEENS, DANKE SCHON PAPA!』を再現するツアーをやります。あと、GATALIのほうは7月にツアーを組んでて。実はコロナの前にGATALIの音源を作ってたんですよ。ちょうど2019年ぐらいにレコーディングしてて。コロナのときに基本的にライブが出来なかったっていうこともあるんですけど、そういうシリアスな世界のバンドじゃないから。もっと楽な状態になってからまた会おうみたいな感じでほっといたんですよ、その音源を。もう俺たちも「何だっけ?」になってるんだけど(笑)。そのアルバムを持って7月にツアーしようと思ってますね。

──須藤さんの弾き語りの予定はありますか?

須藤:いま俺、弾き語りをいよいよ真剣に取り組んでいきたいなって思ってて。5月にはDOESの(氏原)ワタル君とのQueでの弾き語り2マンも決まってるし。去年はブレたくないから、声掛けられててもそこには目を向けないようにしてたんだけど、今年からはその弾き語りっていう場に目を向けていきたいなって思ってます。あと、斉藤君と『cozy party』も6月に決まってて。

──すでに盛りだくさんのスケジュールですね。

須藤:マンスリーはみんなが聴きたかった、最近あれ全然やらない、二度とやらないんじゃないかって思っているような曲がポン、て出されるセットリストになっていくと思うんですよね。「うわ、それキター!」みたいな。そういうコンセプトなきコンセプト、通常のライブならではのセットリストを楽しみにしてもらえたらなと思います。週末だからみんな気軽に遊びに来てもらえたらなと思ってます!

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