「大関陥落」川崎に完勝も広島に完敗 J1初昇格・町田「首位躍進」は規律と質と反則に【J1リーグ2024年シーズン「波乱の序盤戦」ウラ事情】大激論(1)

広島には敗れるも、J1初挑戦のFC町田ゼルビアが快進撃を続けている。撮影/原壮史(Sony α1使用)

2024年のJ1リーグが開幕して、1か月半が過ぎた。毎年、予想外の展開となるJリーグは、今季もJ1初昇格のFC町田ゼルビアが首位に立つなど、いくつものサプライズを提供している。驚きにはネガティブなものもあるが、それもまた課題や問題を解決することで、今後のチーム上昇へのヒントとなるだろう。第7節までの発見、そして今後の展望を、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が語り明かす!

■引いて守っていた「去年とは印象が違う」町田

――まだ第7節が終わったばかりですが、一番の驚きは、やはりFC町田ゼルビアの首位躍進でしょうか。

後藤「大相撲では尊富士が優勝しましたから。新入幕で初優勝。大関は何をしているんだ(笑)!?」

大住「川崎フロンターレとの試合を見にいったけど、完勝だった。川崎の前半のシュートは1本だけで、ペナルティエリアにほぼ近づけなかった。川崎がやり方を変えて、後半は少し様子が変わったけど、GK谷晃生が退場処分になるまで試合を支配していたのは、やはり町田だった。前半なんて、ほとんど川崎陣でサッカーをやっていて、川崎がボールを持って何とかしようとすると、アッという間に奪い返しちゃうんだから、まさに支配だよね」

後藤「今の川崎は大関から陥落しているから、仕方ない」

大住「2場所負け越したの(笑)? 3連敗はあったけどね」

後藤「町田は引いて守っていた去年とは印象が違うよね。去年から備わっていた規律に加えて、個人の質が上がったから、良い試合ができている」

大住「そうだね。町田は全選手が本当に集中して相手にプレッシャーをかけて、それがチームとしてつながっていくから、大きな力になる。そうやって攻めに転じるから、チャンスもできるんだよね。町田はいろいろ言われていて、川崎戦でも開始2分でロングスローを見せていたけど、サッカーとしては本当にモダンだなという感じがするよね」

■大関相撲・広島に完敗も「スキッべ監督が大激怒」

後藤「去年はだいぶ問題があったけど、今年は本当にちゃんとつなげるし、良いサッカーになってきている。ただし僕の意見としては、簡単に反則で止めるのは、ちょっとよしてほしいな。反則の多さは、玉に瑕だね」

大住「見ていて、ここではファウルしてはいけないが、あそこまではOK、ということまで指示されているように感じた」

後藤「サンフレッチェ広島は第6節で完璧な“大関相撲”を見せて町田に勝っていたけど、ミヒャエル・スキッベ監督は反則で止められるたびに、飛び跳ねて怒りまくっていたよ。頑張って頑張って、どうしようもなくて最後に反則してしまうのではないからね」

大住「そうしているうちに、相手もその流れに引きずられて、自分たちも反則をしだすんだよね」

後藤「広島は最後にロングスローで1点取られたけど、完勝だった。町田の反則が多いこともうまく利用していた印象で、PKも奪っていたよ」

大住「川崎戦後の黒田剛監督は、その反省も活かして戦ったと話していたけどね」

後藤「ロングスローについては、日本代表も対策が必要みたいだから、町田にもうちょっとやってもらってもいいかもしれない」

大住「ハーフウェイライン近くからも使うんだよね。コーナーに向けて投げて、スピードのある選手をどんどん走り込ませて、相手がたじろいでいるうちにCKを取ったりする。ああいう使い方もあるんだなと思ったけど、スローインをバカにするチームは勝てないと思う」

後藤「スローインを簡単にとられてやられることもあるからね」

■ロングスロー勝負は疑問も「1点差で勝つ」チーム

――大住さんは開幕前、町田は2点目を取れないときついと話していましたが、1-0で勝ち切れる試合が多いですね。

大住「川崎戦では、町田は退場者が出て10人になったけど、そのとたんに5バックに切り替えた。黒田監督は5-3-1とフォーメーションを表現していたけど、僕が見ている感じでは5-1-3なんだよね。最終ラインに5人が並んで、中盤には柴戸海が1人だけ。FWを3人並べていたので、中盤をパスで崩すのがうまい川崎相手に守り切れるのかなと思っていたんだけど、FW3人が手を抜かずにものすごく頑張って守るんだよね。結局、何度かピンチはあったけど、1-0で勝ってしまった。それに、VARで取り消されたけど、2点目のゴールネットを揺らした場面もあった。あのVARの判定については、少し疑問はあるんだけど、2点目を取れないチームではないということは、よく分かった」

後藤「1点差で勝つチーム、だね。2点差で勝ったのは1度だけ。去年みたいに引いて守るのではなくて、ちゃんとした戦いで1点差で勝っている」

大住「アグレッシブに1試合戦い抜けるチームになっているよね」

後藤「だけど、ロングスローというサッカーの本質ではないところで勝負するのはやめてほしいね」

© 株式会社双葉社