【巨人】高梨雄平の闘志に火をつけた阿部監督の〝無言のメッセージ〟 魂の2球で完璧火消し

粋な計らいが鉄腕の闘志に火をつけた。巨人が9日のヤクルト戦(鹿児島)に3―1で逆転勝ちし、勝率5割に復帰。主砲・岡本和が2号ソロを含む全得点を叩き出し、先発した山崎伊も6回途中1失点で今季初勝利をマークした。

その中で大きく勝利に貢献したのが、この日一軍に昇格したばかりの高梨雄平投手(31)だった。わずか1点リードの展開で山崎伊が6回に二死満塁のピンチを招いた場面で2番手として登板。一打で逆転を許す場面でも冷静さを失わず、西川を相手に外角球で空振りを奪うと、2球続けたスライダーで二ゴロに打ち取った。絶体絶命の窮地を脱した左腕はグラブを叩きながら雄たけびを上げ、喜びを爆発させた。

〝魂の2球〟でチームの危機を救った高梨は「キャンプからファームでやってきて、今季初登板があの場面。『ここで抑えなかったら今年終わりだな』と思って、全球勝負球の気持ちでいったことが結果として良かった」と胸をなで下ろした。

年々若返りを果たすチームにあって、ブルペンの最年長は球春到来から長い二軍生活が続いた。それが一軍に復帰して即送り出されたのは、試合の流れを左右するしびれる場面。高梨は阿部慎之助監督(45)から送られた〝無言のメッセージ〟と受け取ったという。

「大量点差の場面とか、徐々に慣らしながらの起用もあったと思うけど、あの場面で行くっていうことはすごい粋に感じました。会話とかは特にないけど『こういうところで行くんだよ』って。『ここが君の職場です。さあどうなの?』みたいな。プロ冥利に尽きますよね」

阿部監督は見事に火消しに成功した高梨を「ああいう厳しい場面でね。(二軍から)呼んで良かったなと思いましたよ」と満面の笑みを浮かべた。指揮官にとって全てを言葉にすることは無粋。信頼しているからこそのタクトだった。

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