なぜミラノはペルージャに逆転負けを喫したのか? 石川祐希の同僚が敗因を分析!「ミラノは巻き返せたと思っている」【現地取材】

バレーボール男子日本代表の主将・石川祐希が自身のキャリアと所属先アリアンツ・ミラノのクラブ史に新たな歴史を刻むために、奮闘中のイタリアリーグ/スーペルレーガで2023-24シーズン・プレーオフに臨んでいる。

筆者は、現地時間4月7日に行なわれた強豪ペルージャとの第3戦を取材するべく現地に向かったが、ミラノは1セット目を先取するも逆転を許してセットカウント1-3であえなく敗戦。準決勝の成績は1勝2敗となり、3戦先勝(5試合制)が条件の決勝進出へペルージャが王手をかけた。

石川は、昨年12月に腰痛から復帰して以来、公式戦20試合連続の先発出場。昨季プレーオフから今季の準決勝2戦目まで通算10試合を数えるペルージャとの対戦で破竹の活躍を続けてきたが、この日は控えめなパフォーマンスに終わった。

試合後、インタビューをお願いしようと、いつもならフロアでストレッチする石川を探したが見当たらない。それに気づいたミラノのトレーナーが、セッターのパオロ・ポッロ(イタリア)と一緒にアンチドーピング検査へ直行したので、会場には戻らないだろうと教えてくれた。それなら通用口へと思い移動。そこにはまだ小さな子ども、中高生からご年配の方まで大勢のファンが、「イシカワ出てくるよね?」「ユウキまだかな?」と話しながらサインや写真撮影をお願いしようとすでに待機していた。

試合終了からゆうに1時間が経過した頃、ミラノブルーのパーカーに着替えた石川が姿を現すも、周りを囲むスタッフに急かされながら速足でエンジンをかけて出発を待つチームバスへ。そのまま、アウェーの地ウンブリア州から5時間前後が見込まれる帰路についた。残念ながらメディア取材全般に対応できる時間は残っていなかった。
そんななか、敗戦後にもかかわらずミラノ主力3選手が快くインタビューに応えてくれた。

「コメントをお願いしていい?」と声をかけると、「もちろん!」と話し始めたのは、ミラノの守護神、リベロのダミアーノ・カターニャ(イタリア)。「2セット目以降にペルージャがサーブで攻め込み始めてから、僕らはレベルの部分であと少し上げきれなかった。第2、3セットは、集中力も低下してしまった。けれど、4セット目は相手サーブに対応できサイドアウトを続けた。立て直せたと思うので、次戦まであまり日数がないけれど、第4戦へ向けチーム一丸となってしっかり準備します」と反省の弁を述べつつ、奮起できたことを4戦目へ繋げたいと話した。
2人目は第1戦でもインタビューを受けてくれた東京五輪の銅メダリスト、ミドルブロッカーのアルゼンチン代表アグスティン・ロセル。ドレッシングルームへ向かう際に足を止め、「僕らはベストな形で試合をスタートさせたが、第2、3セットはそれを続けることができなかった。普段のミラノならありえないミスが出てしまった。ペルージャは非常に強いチーム。対戦相手の力を封じ込め苦戦を強いるんだ。今日の試合がまさにそれだったと思う。4セット目は切り替えて良い兆しが見えたのに、ギアをもう一段上げることができなくて悔しい...」と敗戦を振り返った後、「でも、グズグズせずに次の試合のことを考えなくちゃいけないんだ」と次戦への決意を示した。

最後は、トレンティーノを昨季リーグ制覇へ導き、今季からミラノで石川の対角を務める経験豊富なアウトサイドヒッター、ブルガリア代表マテイ・カジースキ。チームバスへ向かう途中に立ち止まり、「声をかけてくれて嬉しいよ」との第一声に続き、「僕らに1セット目を取られて、ペルージャは第2セットで強度に重点を置くサーブへスタイルを変えてきた。その上、サーブミスが激減していった。そこからいくつかの場面をきっかけに試合の流れが変わってしまった。ミラノは巻き返せたと思っている。けれど、僕らはチャンスを活かすことができなかった。それを許さないのがペルージャの強さでもあるんだ」と試合を回想。
連戦の疲労の影響はなかったか?と尋ねると、今秋に40歳を迎えるベテランは、「僕はミラノの中で最年長なんだ。知っているよね?」と笑いながら、「僕自身はそれほど疲労を感じていないけれど、その点はチームとしてケアを含め気を配る必要があるね。とにかく、次の4戦目へは、これまで以上に良い準備をして覚悟を持って臨むつもりだ」と正念場となる次のホーム戦へ向け、頼もしい答えが返ってきた。

次戦は、決勝進出への意地がものを言う大勝負。石川とミラノの面々が底力と持ち前の不屈の精神で難局を乗り越えてくれるはずだ。

取材・文●佳子S.バディアーリ

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