新入社員やシニア層は必読!「正しいお金の貯め方」と「マネーの知識」を身につけるのに4月は最適

“お金の知識”を学ぶのにピッタリの時期(C)日刊ゲンダイ

4月は新生活のスタートだ。新入社員は初めての給与を手に、将来設計を真剣に考え出す。新NISA(少額投資非課税制度)を始めようという人も多い。シニア層は気持ちを新たに“お金の知識”を学ぶのにピッタリの時期。どうやって貯めたらいいか。正しい貯め方とは?

■金融資産の平均保有額は1307万円

この4月から社会人になった20代男性Aさん(独身)が言う。

「正社員ではなく、派遣会社経由で仕事につきました。今後を考えると投資を含め、お金を貯めなければと思っています。ただ、どれぐらいを目安に貯めればいいか。その辺がまるで分からなくて……」

まわりの人はどの程度、貯めているのか。平均はどれぐらい? お金にまつわる知識として知っておきたい。

家計の金融行動に関する世論調査(金融広報中央委員会)に参考になるデータがある。

2人以上世帯だと、金融資産(預貯金や株式など)の平均保有額は1307万円。年代別に見ると、20代が249万円、30代は601万円、40代は889万円、50代は1147万円、60代は2026万円、70代は1757万円だ。

独身の場合は金額が変わり、20代から順に121万円、594万円、559万円、1391万円、1468万円、1529万円となる。前出のAさんが貯金の目標とすべき金額は121万円だ。

「貯めたい金額を設定するのは大事です。3年間で100万円貯めようと思ったら、ひと月に2万8000円ほど貯金すればいい。具体的な金額イメージを持つといいでしょう」(経済評論家の倉多慎之助氏)

社会人1年目で、しかも派遣となると、置かれた生活環境にもよるが月に2万8000円を捻出できるか。

「正直、健康保険など社会保障費のことはあまり理解していません。幸い、実家から通えるので家賃は発生しませんが、手取り額は月に15万円あるかないかだと思います」(前出のAさん)

一般的には手取り額の2割を貯めるのが理想。このケースだと3万円だ。2万8000円は範囲内になる。ただし、独身世帯のひと月あたりの消費支出額は16万7620円(2023年家計調査)。

実家を出たらカツカツの生活になりかねない。貯金どころではなくなるかも……。

■生活費の3カ月~半年分は現預金に

そうなると実家にいるうちにできるだけ貯めたいところ。

「単身者でも夫婦2人でも、いざというときのために生活費の3カ月から半年分は現預金などで確保しておくべき。まずはそこからスタートです」(倉多慎之助氏)

Aさんが1人暮らしを始めたら月に17万円弱は必要だ。半年だと102万円になる。「3年で100万円」を目標にしてもいいが、これだと3年間はコツコツ貯めるだけ。地道な銀行預金のみで、話題の新NISAも利用できない。資産運用のワクワクドキドキは体験できずじまいだ。そんなときは柔軟に考えよう。貯蓄に回す2万8000円を2つに分ければいい。1万4000円はいざというときのための生活費貯金、そして半分の1万4000円は新NISAで運用する手法だ。

新NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがある。「つみたて」は比較的、安心な投資信託などが揃い、「成長」は個別銘柄への投資も可能。半年分の生活費を確保するまでは「つみたて」が無難だ。

「とはいえ、投資できる金額の3分の1程度は成長枠でいいと思います。株式はリスク資産なので損失を出す危険はあります。でも、配当金を得られたり、株主優待を楽しむこともできます。そして何より、株価上昇で資産が増える可能性もあります。中長期の投資だったらなおさらでしょう」(倉多慎之助氏)

平均額には統計のカラクリがある

シニア層も基本は同じだ。3カ月から半年分の生活費は普通預金などに置いておく。2人以上世帯の消費支出は平均で約29万4000円。年齢によって多少のバラつきはあるものの90万円から180万円はイザというときのために置いておきたい。

金融資産の平均保有額(2人以上世帯)は50代、60代、70代とも1000万円以上ある。60代に限れば2000万円超えだ。これだけ貯めておけば、平均的な家計というわけだが、実は統計のカラクリがある。

この数字には超金持ちも入っているので、例えば2億円の金融資産を保有している人が1人いるだけで平均額はグッと引きあがる。仮に10世帯を調査。2億円が1世帯、1000万円が1世帯、600万円が3世帯、300万円が5世帯だとすると、平均額は2430万円。10世帯中、9世帯が平均以下となってしまう。

統計には「中央値」がある。上から順番に並べてちょうど真ん中の順位はいくらかというものだ。前出のケースだと、5番目600万円、6番目300万円なので「(600万+300万)÷2=450万円」。中央値のほうが実態に近いといえそうだ。

中央値を見ると、50代の金融資産は300万円、60代と70代は700万円。こちらのほうが、より身近な数字だから、平均額より少ないと嘆くことはない。

■投資額は「損してもいい」の3倍まで

「シニア層も資産運用の3分の1は株式投資でいいと思います。新NISAの成長投資枠を利用すれば非課税での運用も可能です。株式相場はいま日経平均が4万円前後をウロウロしていますが、今年度の企業業績予想が固まってくる4月下旬には株高傾向になると踏んでいます。年末には4万円台半ばに到達しているかもしれません。ここから個別銘柄を買うなら電力やガス、鉄道など公共性の高い会社がいいと思います」(倉多慎之助氏)

さて、株式投資の金額はどのぐらいをメドにすればいいか。「家計の金融行動に関する世論調査」によると、平均額は253万円。年代別では50代が183万円、60代407万円、70代369万円だ。

金融資産の内訳(種類)で最も多いのは預貯金の563万円、次いで株式、生命保険(貯蓄額)、投資信託となっている。

「ただ、新NISAの登場やインフレの影響もあって預貯金は減少傾向といえます。近ごろは金(ゴールド)や投信のオルカン(オールカントリー=全世界株式)への投資も人気になっています。物価高により、預貯金は実質的な目減りが激しくなってきたし、お金をどこに置いておくかを真剣に考えるシニア層は増えています」(金融関係者)

新NISAでインデックス型(指数連動型)のオルカンを購入する人が増えている。気をつけたいのは投資の限度額だ。オルカンは比較的、安全な投信だがリスク商品には違いない。

基本的には「損を出してもいい」と思える3倍以内に投資額を抑えること。100万円の損失だったら諦める……と覚悟すれば投資額は300万円まで。

日経平均の雲行きは怪しくなってきた。まずは無理のない範囲で資産運用をスタートさせたい。

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