いぶし銀の学生(4月10日)

 学びに年齢制限はない。知識を身に付ける方法もさまざま―。福島市の60代の男性会社員は先月、放送媒体を利用する通信制大学を終えた。20年にわたって学びを深めた。「わくわく感と共に過ごせた」と振り返る▼「学び舎[や]」は自宅。仕事と両立させた。関心のあるコースや科目を選び、真新しい教科書のページを広げる。試験への緊張感と結果を待つ胸の高鳴り…。単位を落としたのも懐かしい思い出だ。入学当初は本業に役立つ分野を選んだが、いつしか福祉、社会、文化、自然など履修可能な全てを修めた▼初めから天才は存在しないのだろう。かのアインシュタインいわく〈学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる。無知に気づけば、より一層学びたくなる〉。当世の物理学の常識を覆す相対性理論を打ち出した。自分は発展途上の身だとの謙虚な気持ちが、世界を驚かせる知の扉を開いたのかもしれない▼通信制大学を終えた男性は大学から名誉学生の称号を贈られた。さぞ、爽快だったに違いない。4月は始まりの時。「学ぶには遅すぎる。時間もないし、自分には無理」の思い込みがあれば拭い去り、一歩踏み出そう。いぶし銀の学生さん。<2024.4・10>

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