恩師の遺志継ぎ、会津漆器と歩む 福島県会津若松市の大粒来莉々さん 後継者訓練校に入校

高瀬校長から入学許可書を受ける大粒来さん(右)。井波さんの教えを胸に会津漆器の発展に尽力すると誓う

 「先生の教えを胸に、会津漆器発展の力になる」。会津大短期大学部を今春卒業した大粒来(おおつぶらい)莉々さん(21)=福島県会津若松市=は9日、会津漆器技術後継者訓練校の入校式に臨んだ。会津大短期大学部教授で、2日に64歳で死去した井波純さんが送り出した最後の卒業生。漆芸の専門教員として普及発展や後継者育成に尽くした師の遺志を継ぐ決意だ。

 大粒来さんは岩手県奥州市出身。高校時代に現代生活と調和する会津漆器の魅力に触れ、進学先を選んだ。井波さんのゼミに所属し、漆の知識や技法を懸命に学んだ。

 井波さんは2005(平成17)年から会津大短期大学部で教員を務めた。学生と共に地域の文化財保存に取り組み、小学生向けの教室で漆の歴史や魅力を伝えた。「本当に優しい先生だった」と大粒来さん。漆の道に進むと決めた後も、さまざまなことを相談できる大きな存在だった。「得意な絵を生かすため、訓練校では技術の引き出しを増やせるよう頑張って」。井波さんから受けた言葉は深く胸に刻まれている。

 井波さんと最後に会ったのは3月29日。研究室を訪れ、新生活の準備が整った報告など、たわいない話を楽しんだ。別れは4日後、突然訪れた。

 大粒来さんは市内の県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターで行われた入校式で、高瀬淳校長から入学許可書を受け取った。2年間、会津漆器協同組合加盟事業所の従業員として基礎的な技術を磨く。会津の漆業界に本格的に携わることになり、「気を引き締めて頑張りたい」と恩師に誓った。

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