中国で業界特化型AIモデルが次々誕生、コード生成もAIがサポート

中国で業界特化型AIモデルが次々誕生している。資料写真。

AIがコードを生成することで、意思の疎通がぎこちなかったAIカスタマーサービスが次第に使いやすくなり、開発に時間と労力を必要としていた工業AIコントローラーが不要になるなど、AI(人工知能)の基盤モデルが今、さまざまな業界に進出するようになっている。そして、基盤モデルをベースにしたITや工業生産、金融、サービス・マーケティングといった業界に特化したAIモデルが次々誕生している。

通義霊碼がコード生成をサポート AIモデルは、コードを生成したり、ライブコマースを行ったり、人と意思の疎通を図ったりすることができる。阿里雲(アリクラウド)は最近、プログラミングAIモデル「通義霊碼」(トンイーリンマー)がコード生成やコード説明、バグチェック、コード最適化などにおいて開発者を支援できるよう、AIプログラミングを内部で全面的に進めていることを明らかにした。さらに、「通義霊碼」に社員番号「AI001」を振り分けたという。

阿里雲の関係者は、「今後、当社のコードの20%は『通義霊碼』が生成するようになるだろう。研究開発の中心となるのは依然としてプログラマーであるものの、彼らは今後、システム設計や主要事業の開発により多くの時間を費やすようになるだろう」との見方を示した。

これまでは、プログラマーが毎日、コード生成を繰り返し、さらにテストと最適化、生成コードへの注釈追加といったベースとなる作業を行うというのが開発のスタイルとなってきた。プログラマーはこうした作業に大量の労力と時間を使う必要があり、それが主な業務となってきた。しかし、阿里雲では「通義霊碼」がすでに各プロセスにおいて、開発者を支援する役割を果たすことができるようになっている。API(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を開発する際のテストを例にすると、プログラマーの場合は数十分を必要とするテストコードの生成を、「通義霊碼」は数秒で完成させることができ、テストコード生成に必要な作業量を70%以上減らすことができる。

AIプログラミングツールは現在、プログラミング言語の境界線を打破し、プログラマーが各種プログラミング言語のコード生成を簡単に行うことができるようになっている。阿里雲と通義実験室が共同で開発した「通義霊碼」がすでにJavaやPython、JavaScriptといった200種類以上のプログラミング言語を把握し、それらが生成したコードはプログラマーによって1日当たり数百万行利用されている。

特化型AIモデルが次々誕生

デジタルヒューマンがライブコマースを行うと、人間が行う場合と比べてコストを85%カットすることができ、商品の取引額も85%に達する。これまでなら、カスタマーサポートセンターのAIアシスタントとチャットをしても、意思の疎通がうまくいかず、スタッフに切り替えてもらわなければならないというケースも多かった。しかし、今ではAIアシスタントが問題の90%を解決できるようになっている。文字を一言打ち込むと、AIはポスターやスクリプト言語、動画を生成し、二次加工までしてくれるようになっている。中国インターネット検索最大手の百度のクラウドサービス「百度智能雲」は、基盤モデルを応用した製品の発表会を行い、基盤モデルをベースにして、さまざまなシーンに特化したAIモデルをまとめて発表した。

金融や工業といった分野を見ると、基盤モデルは企業の効率アップに大きく貢献するようになっている。「馬上消費」の孫磊(スン・レイ)副総経理は、「金融業は知識集約型業界に属する。産業革命の益を受けることはあまりなかったものの、AI時代は多くの益を受けることができるだろう」との見方を示し、昨年8月に打ち出した金融に特化したAIモデル「天鏡」を例にして、「『天鏡』を採用して以来、当社のマーケティング業績は30%以上上昇した」とした。

特化型AIモデルの分野が「ブルー・オーシャン」に

AIモデル産業は大きな発展を遂げているが、そこに参入するとどんなチャンスがあり、そこに参入する意向を示す起業家はどんな課題を乗り越える必要があるのだろうか?

360集団の創始者・周鴻禕(ジョウ・ホンウェイ)氏は先ごろ行われたAIをテーマにしたフォーラムで、「資金や技術の蓄積が十分にない起業家は汎用的な基盤モデルには参入しない方がいいだろう。理想だけでは成功することはできない」と指摘し、「現時点で、汎用的な基盤モデルは、中国では主に文章作成や画像作成などに応用されている浅い段階。一つのシーンに深く入り込み、ユーザー主導の一つの業界に特化したAIモデルは今年、爆発的に成長するだろう」との見方を示した。

金沙江創業投資基金の朱嘯虎(ジュウ・シャオフー)マネージング・パートナーも、「起業家が汎用的な基盤モデルを利用してもあまり意味がない。それよりも、ユーザーやシーン、データを取得することに力を入れる方が価値がある」との見方を示す。朱氏は中国の汎用的な基盤モデルを専門とする会社のビジネススタイルについて、「はっきりとした商業化のルートやデータによるサポートが不足している会社が多い。投資家は一層慎重になっており、ビジネススタイルが明確ではないAI系会社をサポートすることを避けている」と指摘したこともある。

北京同為私募基金管理の創始者の周偉(ジョウ・ウェイ)最高経営責任者(CEO)も最近開催された基盤モデルをテーマにしたイベントで、「一つの業界に特化したAIモデルの方が生き残りやすい。当社は主力となっているスタッフや多くの資金をそうした特化型のAIモデルに集中的に投入している」とした。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

© 株式会社 Record China