史上最多9544人集結、裏方も本気で挑んだ“最後のVリーグ” 可能性示し「世界最高峰」へ再出発

V1リーグ男子ファイナルステージの決勝では観客数9544人を記録した【写真:中戸川知世】

バレーボールVリーグ1部ファイナルステージ

バレーボールのV1リーグ男子ファイナルステージ(FS)の決勝が3月31日に行われ、Vリーグ史上過去最多となる観客数9544人を記録した。試合はサントリーがパナソニックにストレートで勝利し、2年ぶり10度目の優勝。熱気に包まれた東京・有明コロシアムは、日本バレーが秘める可能性を示していた。

リードしている状況でも「終わらないでほしいと思った」。サントリーのセッター・大宅真樹主将の試合後の言葉。それぞれのチームカラーで会場を染めた9544人の観客と作り上げた頂上決戦は格別だった。

お互いに一歩も譲らず、デュース12回を数えた第2セットは「37-35」で決着。得点が決まる度に会場が沸いた。アタックを決め、地鳴りのような歓声を浴びたパナソニックのエース・西田有志は「これだけの観客の中でやれることは多くないし嬉しかった。いつもより大きく喜びを表現した」と派手にガッツポーズ。選手のモチベーションアップにも繋がっている。

「都内で収容人数1万人」を条件に開催が決まった有明コロシアム。チケットは前日で完売。Vリーグ史上最多の観客数を記録した。

男子日本代表は昨年のパリ五輪最終予選で、16年ぶりとなる自力での出場権を獲得。ネーションズリーグでも3位になるなど、バレーボール界を盛り上げた。一方でJVL広報・プロモーション部長の吉田国夫氏は「各チームスタッフの努力の積み重ね」とも話す。

運営、ファンサービス、グッズ制作などに尽力する裏方の存在。チームスタッフは、決勝前日に現地入りし、会場を横断幕でいっぱいにした。当日も朝早くから準備し、観客が来てからはパナソニックが5000枚、サントリーは3000枚のチームTシャツを無料で配布。試合中には「少しでも選手のサポートになれば」とメガホンや太鼓を叩いて声援を送り、セット間には丁寧に応援グッズを配った。

来季からは世界最高峰を目指す「SVリーグ」に

サントリーの小野寺太志は「僕たちを支えてくれたのは沢山の声援で、それを作ってくれたのは裏方の方々。今シーズンずっと支えてもらっていた」と感謝。スタッフの努力なしには実現しない晴れ舞台だった。

現行のVリーグは再編成され、この秋から「SVリーグ」に名称を変えて新たなスタートを切る。プレーはもちろん、観客の満足度でも世界最高峰を目指す。

FSでは女子トイレの行列を回避するため、一部の男子トイレを女子トイレとして使用。託児所も設置し、選手の家族や一般客が予約制で利用した。女性ファンが多い特性を考えた配慮。来季は試合数が増加し、ホームで20回程度の試合数が見込まれる。

「何回も来てもらえるように。選手も好きだけど、チームも好きになってもらいたい」と吉田氏。FSだけでなく、各ホームゲームでのクオリティアップにも尽力していくつもりだ。

小野寺は「Vリーグでこれだけ多くの方の前でプレーしたのは初めて。この空間をレギュラーシーズンでも作り出せるように、ファンの皆さんと一緒に新しいリーグに繋げていきたい」と意気込む。実力、人気ともに高まりを見せている日本バレー界。この秋に始まる新たなリーグへ、選手もスタッフも一丸で向かう。

THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe

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