「遅くまで会社に残るのは熱心」という〈美徳〉をぶっ壊せ! 休むことに罪悪感を抱いてしまうあなたに伝えたいこと【医学博士からの提言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「疲れたから今日は会社を休む」は、日本において「悪徳」なのでしょうか? 勤勉な国民性ゆえに「休めない」国、日本。医学博士、また日本リカバリー協会代表理事でもある片野秀樹氏の著書『休養学: あなたを疲れから救う』から、休まない文化を良しとする日本文化の実態と背景を見ていきましょう。

いまだに「休まないのが美徳」とされている

ある年代より上の人は、「日本人は働きすぎだ」とか「働きバチだ」とさかんにいわれた時代があったことを覚えているでしょう。

しかし、現在の日本の勤務時間の長さや休日の日数などを諸外国と比較すると、実はそれほど働きすぎというわけではありません。

とはいっても、勤勉な国民性であり、休むことを罪悪と捉える傾向があるのはたしかです。

たとえば職場では、「おはよう」「こんにちは」というあいさつの代わりに「お疲れさま」と声を掛け合いますね。

グーグル翻訳で「お疲れさま」を英語に翻訳してみると、「Thank you for your hard work.」と出ます。直訳すると、重労働をしてくれてありがとう、というような意味です。

こんなあいさつが日常的に交わされているのは、疲れているのが当たり前という共通認識があるからなのではないでしょうか。

ここにはわれわれ日本人の、「粉骨砕身して働くことが当然である」という意識のあり方があらわれているように思います。休まずに出勤することが、いまだに美徳とされているのです。

「働かざる者、食うべからず」ということわざがあるのもうなずけます。

一方、英語のあいさつは「Hi,how are you?」です。

こんなふうに聞いてくれれば、元気なら「Fine.」、そうでないなら「Not good.」と答えることができるでしょう。

もっとも、「それほど親しくない間柄では、あまり調子がよくなくてもfineと返すのが一般的なのだ」という説もありますが、とにかく体調を尋ねられれば、調子がいいときはいい、悪いときは悪いといいやすいことはたしかです。

ところが先にお疲れさまとねぎらわれてしまうと、調子が悪いとはなかなかいいだせなくなってしまいます。

「疲れているので休みます」といえない

このような日本の職場で、本当に「疲れた」ときにちゃんと休むことはできるのでしょうか。

ここで1つ質問です。あなたは疲れたことを理由に、仕事を休んだことがありますか?

朝起きたら何だか疲れている。体も重だるい。そんなとき会社に連絡して、

「今日は疲れているので、休ませてください」

とお願いしたことがある人はどれだけいるでしょうか。

「そんなことをいったら、『冗談はよせ』と一蹴されるに決まっている」

「『君だけじゃない、みんな疲れているんだ。さっさと会社に来い』と返されるのが関の山です」

という皆さんの答えが聞こえてくるようです。

それどころか、有給休暇さえ、上司がイヤな顔をするので申請しづらいというのが現実かもしれません。

何しろ日本は、学校を1日も休まなかった人を表彰する「皆勤賞」まであり、毎日休まず会社や学校に行くこと自体に価値をおく社会です。まだまだ多くの人が、休むことイコールなまけること、さぼることだと捉え、休むことに罪悪感を抱いています。

疲れていればパフォーマンスが出ないことはみんなわかっています。それでも自分だけ勝手に休むわけにはいかない。だから出社はするけれど、能率が全然上がらない。いったん出社すれば、上司が帰らないと自分も帰れない。「遅くまで会社に残っていると熱心だ」「早く帰るやつは仕事をしていない」といわれる……。

こうした”疲れているのが当たり前の社会“”疲れたら休むという当たり前のことができない社会“はやはりおかしいのではないでしょうか。

片野秀樹

日本リカバリー協会代表理事

博士(医学)

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