50歳で急逝した吉江豊さん、クロード・チアリの娘がリングで追悼唱、馬場さんとの縁も 代表はハヤブサさん鎮魂

今年3月10日に急逝したプロレスラー・吉江豊さん(享年50)の追悼セレモニーが7日に開催されたエンタメ系団体「怪獣プロレス」の第3弾興行(東京・浅草花やしき花劇場)で行われた。吉江さんは昨年9月に旗揚げした同団体に深く関わっており、同団体のリングアナウンサーで声優、タレントのクリステル・チアリが10カウントとコール、さらに熱唱で亡き盟友を送り出した。

吉江さんは3月10日、全日本プロレスの群馬・高崎大会での試合後に控室で意識を失い、同市内の病院で死去した。クリステルは2014年から同団体でリングアナウンサーのキャリアをスタートしており、その現場で吉江さんとも時間を共有した。

「吉江さんは部外者の私にも優しく、いつも笑顔でよくしていただきました。今回、大好きな吉江さんのために歌わせてもらえませんかとお願いしました。東日本大震災で失った人のことを思って私が歌詞を書き、オオゼキタクというシンガー・ソングライターが曲を付けて、(フュージョンバンド・カシオペアの元メンバー)向谷実さんに相談して、すごいオーケストラを集めてくださって世に出していただいた『大切なたからもの』という曲です。リングの上で歌えたらどんなに素敵だろうと」

クリステルは世界的なギタリストであるクロード・チアリの長女。父がジャイアント馬場さん(1999年死去、享年61)と懇意で、その馬場さんが創設した団体のリングに立つという縁もあった。

「父はプロレスが好きで、(拠点の関西から)東京に来ると、馬場さんがよくいらっしゃる赤坂の(旧)キャピトルホテル東急でお会いしてたんですよ。私も連れて行ってもらって、(パーコー麺やパンケーキなどで有名な店)『ORIGAMI』でお食事したり。私が赤ちゃんの時に馬場さんに頭ぽんぽんしてもらって『大きくなれよ~』と言っていただいたり。それが大きかったんでしょうね、自分の中でプロレスが好きになったのは。女子プロレスではクラッシュ・ギャルズや神取忍さんが大好きで、弟に技をかけまくって母によく怒られましたが、将来の夢の一つはプロレスラーでした。レスラーにはなれなかったけど、リングアナとして夢を一つかなえられた。そこで吉江さんともお会いできたわけですから」

追悼セレモニーはセミファイナルの試合前に行われた。吉江さんの兄でお笑い芸人・よしえつねおがリング上で弟の遺影を手にし、スクリーンに大写しになった本人の画像を背に、怪獣プロレス代表のレスラー・雷神矢口と肩を並べた。クリステルによる10カウントゴングで黙とう後、「身長180センチ、体重160キロ、吉江豊~!」のコールが会場に響いた。

さらに、全試合終了後のリングに立ったクリステルはポップス調の曲「大切なたからもの」をフルコーラスで歌い切った。昨年、キングレコードから「大好きな日本の歌」というCDアルバムを英語版とフランス語版で2枚リリースしたクリステル。日本の童謡を英仏2カ国語で歌い、父のクロードに加え、ミュージシャンでもある矢口もコーラスで参加した。その歌声が会場を包み込んだ。

矢口は「クリスが歌ったのは天国に旅立った友だちの歌です。僕にとっても吉江選手はアニマル浜口ジムの後輩に当たる。そして、怪獣プロレスに旗揚げから深く関わってくださり、今後の展開も楽しみにしてくれていた。もう1人、怪獣をモチーフにしたプロレス団体の構想を互いに話し合っていたハヤブサ選手も(16年に)亡くなった。2人で天国から見守ってくれていると思う」としのんだ。

最後はレスラーや解説者も含む出場者全員がリングインしてカーテンコール。同団体のリングで姿を変えて奮闘していた吉江さんを送り出した。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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