「さんずの川でも記録挑戦が待つ。ターンしてくるかも(笑)」世界新を樹立!平泳ぎ3種目、95歳島根の女性 戦争で断念した水泳再開

世界記録の認定書を手にする木村悦子さん=島根県出雲市渡橋町、JSSスイミングスクール出雲

 2024年度日本マスターズ水泳短水路大会に、女子平泳ぎで出場した島根県出雲市多伎町の木村悦子さん(95)が、95~99歳区分の50、100、200メートルの3種目で世界新を記録した。普段練習するJSSスイミングスクール出雲(出雲市渡橋町)で9日、仲間に祝福され「さんずの川でも世界記録挑戦が待っている。案外ターンしてくるかも」と笑わせた。

 大会は6、7日に松山市であった。木村さんは50メートルで1分17秒74、100メートルで2分58秒99、200メートルで6分46秒32を記録し、いずれも2019年にカナダ人女性が打ち立てた世界記録を上回った。

 木村さんは女学生だった約80年前、部活動で水泳に励み、島根県代表選手にも選出されたが、戦争で部活ができなくなり断念。戦後も育児や仕事に追われて遠ざかっていた。60歳で再び水泳を始め、JSS出雲に通うようになった。

 昔取ったきねづかは衰えず、19年に90歳で挑んだ大会では90~94歳の部で7種目の日本記録を更新した。区切りがついたとプールを離れたが、自宅にいるのに退屈し、95歳を迎えて今度は世界記録挑戦に狙いを定めた。今年1月にJSS出雲に通い始め週2回、千メートルほど泳いで備えた。

 練習時のタイムで既に世界記録更新の自信はあった。しかし、大会初日の200メートルの直前にペース配分が不安になり、血圧が200に上昇。気持ちを抑えて泳ぐように努めると練習時より10秒以上、世界記録より約36秒も速かった。

 好記録で気楽になり最終日の50、100メートルは「ぶっ飛ばせばいい」と迷わず、50メートルは世界記録を約15秒、100メートルは約35秒上回った。表彰式では会場の拍手がプールから脱衣所へ戻るまで続き、「人生で最良の時間だった」と振り返る。

 9日はJSS出雲でも、スタッフや水泳仲間が拍手で迎え「おめでとう」と声をかけられた。木村さんは「私1人では達成できなかった。応援してくれた皆さんのおかげ」と感謝した。

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