欺瞞だらけ「子育て支援金」に専門家も苦言…下支えするのは平均給与に満たない低・中所得者

社会保険料上乗せは制度の理屈も全く通らない(加藤鮎子・子ども担当相)/(C)日刊ゲンダイ

「筋が通らない」──。少子化対策の財源確保のため公的医療保険料に上乗せされる「子ども・子育て支援金」について、専門家も苦言を呈している。

9日の衆院地域・こども・デジタル特別委員会で行われた参考人質疑で、日本総合研究所の西沢和彦理事は「少子化対策のために医療保険の仕組みを使うことは分かりにくい」と主張。「理論的に正当化されない財源が導入されようとしている」と喝破した。

同じく参考人として出席した京都大学大学院の柴田悠教授(人間・環境学研究科)は、税や社会保険料による負担増と経済成長の関係について先行研究を紹介。経済成長率へのメリット・デメリットを考えた場合、「ベストなのは資産課税である」と訴えた。

社会保険料に上乗せする現行案は、制度的な理屈が通らないばかりか、経済成長にもマイナス──。そんな指摘が専門家から出ているのに、政府は「子育て世代の支援に必要な財源」とゴリ押しして譲らない。

問題は制度的な不備に加え、所得の低い人が負担の中心となる仕組みになっていることだ。

年収200万~400万円の若者の犠牲の上に成り立つ

こども家庭庁は9日、支援金制度による年収別徴収額の試算(別表)を初めて公表。会社員らが入る被用者保険を対象にした。徴収は2026年度に始まり、段階的に引き上げられる。岸田首相は「実質負担はない」と強弁してきたが、ゴマカシも甚だしい。

国税庁の「民間給与実態統計調査」(2022年分)によれば、給与所得者5078万人のうち年収600万円以下は実に77%に上る。男性の平均給与が563万円であることを踏まえれば、平均給与に満たない低・中所得者が支援金制度を下支えすることになる。

2028年度の徴収額を基に年収200万円から600万円の所得層が負担する総額(月当たり)を計算すると、ザッと234億円。一方、年収600万円から1000万円の層は146億円(同)。支援金制度は若い世代の子育てを助けるとうたうが、年収200万~400万円の若者の犠牲の上に成り立つという欺瞞に満ちているのだ。

加藤こども担当相は9日の会見で、試算の意義について「議論のお役に立てていただければ」と、すまし顔だった。議論の余地があるなら、いっそイチから見直したらどうか。

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