関西でも稀少!103系が姿を変えて元気に走る 加古川線 リポート前編(『加古川』~『西脇市』)

加古川線を走る103系

◆『羽川英樹の出発進行!』

兵庫県を走るJR西日本の加古川線は、加古川市のJR神戸線『加古川』と丹波市の福知山線『谷川』を結ぶ48.5kmの電化路線です。

起点となる加古川市は人口約26万人の中規模都市なんですが、姫路と明石にはさまれており、他府県からの知名度は残念ながらあまり高くありません。しかしながら菅原洋一・上野樹里・陣内智則などの著名人を輩出した歴史ある東播磨の商工業都市なんです。

【動画】鉄アナが現地レポート! 加古川線『加古川』~『西脇市』

『加古川』の駅前には、かつて姫路に本店があった百貨店「ヤマトヤシキ」がどんと構えています。地方のデパートが次々廃業する中で、ここはがんばって営業を続けています。他にも「ニッケパ-クタウン」という大型商業施設もあり、駅前はけっこうにぎやか。地元名物「かつめし」を胃袋においしく詰め込んで早速列車に乗り込みましょう。

加古川線は播州鉄道として開設され、かつては高砂線・三木鉄道・鍛冶屋線などともつながっていた歴史があります。また、今なお103系が元気に走る路線としても注目されているんです。103系といえば、かつて東海道線の普通列車として走ったブルーの車両をはじめ、オレンジの環状線、グリーンの関西本線などで活躍。昨年(2023年)春までは和田岬線でも走っていました。ところが、時の流れとともに次々に各線から姿を消し、今や関西で定期的に出会えるのはこの加古川線と播但線だけとなったのです。

始発『加古川』のホームには2両編成の西脇市行が停まっていました。しかし終点の『谷川』まで通しで行く列車は1日1本だけしかなく、ほとんどが『西脇市』止めとなります。車両は2004年の電化の際に導入された103系3550番台。従来の103系のイメージよりシャープになって、窓周りの黒がかなりのアクセントとなっています。前面貫通扉に窓下ヘッドライトを装備し、車内はもちろんロングシート仕様。車体はあの常磐線色とも呼ばれた懐かしのエメラルドグリーンをまといます。

『加古川』を出るとすぐに右側を走るJR神戸線に別れを告げ、大きく左にカーブして、しばらくは高架区間を走ります。そして地上に降りて民家の合間を単線で駆け抜けると、最初の駅が『日岡』です。ここには甲子園球場約9個分の総合公園「日岡山公園」があり、春は桜が園内いっぱいに咲き誇ります。また安産の神様として名高い日岡神社や、公園内にある前方後円墳で十二代・景行(けいこう)天皇のお后・稲日大郎姫の陵墓「日岡御陵」などを見ることもできます。

マンションも立ち並ぶ住宅地の『神野(かんの)』を過ぎると、次は『厄神』。駅名が示す通り、「宗佐の厄神さん」で親しまれる厄除八幡宮(宗佐厄神八幡神社)への最寄り駅なのですが、歩くと30分はかかります。ここには網干総合車両所の車両基地も併設され、一部の列車はこの駅で折り返します。そして2008年までは、ここから三木鉄道が伸びていました。当時、地元FM局のゲストとして、さよなら列車を見送ったことを思い出します。かつての起点となる旧三木駅は現在「ふれあい館」になり、懐かしい写真が多数展示され、線路跡は一部が遊歩道として活用されています。

『厄神』を過ぎると全長96kmという兵庫県最大の一級河川・加古川を国包(くにかね)鉄橋で渡って小野市へ。ここは播州そろばんで有名なところ。とっくに市になってるのにいまだに駅名が『小野町(おのまち)』を名乗るのは、京都の『向日町(むこうまち)』と似ています。なぜ両駅とも駅名を変えないのか不思議です。

万願寺川を渡ると、ローマ字表記“ao”で全国最小駅名になる『粟生』に到着。ヨーロッパ風の明るい駅舎は3社共同使用駅。ここで神戸電鉄粟生線・北条鉄道と接続します。各社とも1時間に1本の運行のため、発車時刻を揃え乗り換えの便宜を図っています。

『社町』は酒米・山田錦のふるさと加東市の玄関口。地球儀形の待合室が目をひきます。『滝』の駅近くには加東市を代表する名勝・闘龍灘があります。加古川の川底いっぱいに奇岩が起伏しており、落水の豪快なリズムと飛び鮎の名所としても知られています。

『加古川』を出て48分で『西脇市』に到着。乗車した列車はこの駅止まりとなります。かつては「野村」という駅名だった加古川線の中間拠点で、1990年まではここから鍛冶屋線が走っていました。沿線では唯一の有人駅で、大半の列車がここで折り返します。そして103系の運転区間もここまでで、このあと『谷川』に向けては125系が運転を担うことになります。

今回取り上げた『加古川』~『西脇市』間は1時間に1本、103系の元気に走る姿が見られる貴重な電化ローカル区間ですが、ここから先の『谷川』までは過疎路線として廃線の危機に見舞われています。そんなローカル線がなぜ全線電化されているのか? 加古川線の持つ重要な役割を含め、これより先のリポートは次回の後編で詳しくお伝えする予定です。(羽川英樹)

※ラジオ関西『羽川英樹の出発進行!』より

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