レノファ山口FCが2年ぶり2度目の優勝で全国へ《JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN中国》

街クラブの意地とJアカデミーの信条

「2024JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN中国」が4月6日、7日に広島県福山市の福山通運ローズスタジアムで開催された。

今大会は開催地の広島県から4チーム、その他の鳥取県、島根県、岡山県、山口県から各2チームの合計12チームが参加。3チームずつ4グループに分かれて予選リーグを行い、各グループ1位が決勝トーナメントに進出する。決勝まで進んだ2チームには全国決勝大会の出場権が与えられる。試合は8人制で12分×3ピリオドの36分間。第1ピリオドと第2ピリオドでメンバーを総替えし、第3ピリオドはメンバー交代自由というルールで行われた。

1日目は予選リーグが行われ、各グループ1位になったサンフレッチェくにびきFC U-12(島根)、 Feliazzurro FC(岡山)、ファジアーノ岡山U-12(岡山)、レノファ山口FC(山口)が決勝トーナメントに進出。春の暖かさに恵まれた2日目は、準決勝でFeliazzurroがくにびきをPK戦の末に破り、レノファ山口がファジアーノ岡山とのJクラブ対決を制して、それぞれ決勝に勝ち進んだ。

Feliazzurroの松本充監督は、「予想以上に選手一人ひとりが頑張ってくれた。岡山で1位になったことで自信がつき、チームで一つになって勝ち切ろうという気持ちを全員が共有できていた」と決勝進出の要因を明かし、「相手はJリーグのアカデミーなのでチームとしてでき上がっていると思う。僕らは挑む立場なので、悔いを残さないように粘り強く戦いたい」と、街クラブの意地を口にした。

レノファ山口の上垣卓也監督は、これまでの戦いを振り返って、「相手をよく見て判断できている回数も多かったし、一人ひとりの武器をそれぞれが出したり、引き出したりできていて、結果もついてきた」と話し、決勝に向けて「今までと変わらず、練習でやってきたことをしっかり出せれば結果もついてくる」と選手たちを信じて送り出した。

隙のないレノファ山口が圧倒

決勝ではFeliazzurroが最終ラインからボールをつないで組み立てる自分たちのスタイルを貫いた。キャプテンの大若悧輝は、「自陣からビルドアップするのがチームの特徴で、自分たちのサッカーをやり切れた」と胸を張る。対するレノファ山口は球際の強さや切り替えの早さで相手を圧倒。キャプテンの木村太一は、「これまで勝ち点1や1得点の差で悔しい思いをしてきたから、他のチームよりも球際やバウンドに対しての思いがあったので、より徹底的にできたと思う」と力強く語った。

第1ピリオドは、勢いを持って試合に入ったレノファ山口が先制点を奪った。「キリアン・エンバペ選手が好きで、スピードを生かしたプレーが得意」という安清蒼斗が高い位置で球際の競り合いに勝ち、そのまま持ち上がってシュート。これがゴール左隅に突き刺さり、安清は「相手からボールを奪えて、シュートもいいコースに決められた」と先制点を喜んだ。

第2ピリオドもレノファ山口が主導権を握り、11分には佐々木快斗が強烈なミドルシュート。本人は「入ったと思った」と好感触だったが、惜しくもクロスバーに弾き返された。だが、直後の12分には右サイドから攻め込み、「仲間がドリブルで侵入してクロスを上げたので、こぼれたところを狙っていた」と振り返るクワシー壌マクニムが逆足の左足でうまくこぼれ球を押し込んで追加点。レノファ山口がリードを2点に広げた。

第3ピリオドは2点を追うFeliazzurroが攻勢を仕掛け、11分には平井天がゴール前で決定機を迎えたが、渾身のシュートは相手GKの好セーブに阻まれた。レノファ山口も最後まで集中力を切らさず、終了間際には安清がゴール前で「相手のタッチが離れていたところを狙った」と隙を見逃さずにボールを奪取。そのままシュートを沈めて、この日2点目を挙げた。試合はこのまま終了し、レノファ山口が3-0の快勝で2年ぶり2度目の優勝を果たした。

レノファ山口は試合の立ち上がりから勢いを持って戦い抜いた。上垣監督がチームのキャラクターについて「明るくて、にぎやかです」と話したように、試合前から選手たちは自分たちを鼓舞するように声を出して盛り上がっていた。キャプテンの木村は、「みんな声がよく出ていたし、熱量で相手を圧倒できたのが結果に結びついたと思う」と優勝の要因を語った。全国大会でもレノファ山口の元気な声が響きそうだ。

準優勝のFeliazzurroは後方からビルドアップするスタイルを目指しているが、松本監督いわく、「この大会の参加チームはそんなに甘くないので、たまには判断を変えて自分たちがやってきたことじゃないこともしなきゃいけないという話はしていた」と柔軟な戦い方も経験。キャプテンの大若も、今大会を振り返って「自分たちでどうしたらもっと良くなるかを話し合いながら戦えた」と成長の手応えを口にした。今大会で得た経験は全国大会でも活きるはずだ。

自信と悔しさを胸に全国へ

両チームは中国地方代表として、5月に神奈川県で開催される「JA全農チビリンピック2024 JA全農杯全国小学生選抜サッカー決勝大会」に出場する。

レノファ山口の上垣監督は、「自分たちがやってきたことを出せれば、どこが相手だろうが、いいゲームはできると思うので、また練習からまた頑張っていきたい」と自信をのぞかせ、キャプテンの木村は「中国地方代表として恥じない姿を見せたい。僕たちはチャレンジャーで何も失う物はないので、泥臭さ全開で戦ってきたい」と力を込めた。

Feliazzurroの10番を背負う山本昊雅は、「(今大会の決勝で)得点を取れなかったので、全国大会では頑張ります」と全国での活躍を誓い、松本監督は「全国の強豪にどこまで通用するか。選手たちの人生のいい財産になると思うので、まずは楽しむことをメインにやっていきたい」と大舞台での戦いを心待ちにしている。

取材・文=湊昂大

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