3~5月は残業が多いと「年4万円」の損!? 年金保険料が上がるしくみとあわせて解説

年金の保険料が上がると損とはどういう意味?

会社員の場合、毎月の年金の保険料は税金や他の社会保険料と一緒に給料から天引きされています。そのため、「年金の保険料が上がると損」というのは、年金の保険料が上がると給料から天引きされる金額が増え、手取り収入が少なくなることを意味します。

年金の保険料は4月~6月の給料を基に決まる

会社員は国民年金と厚生年金に加入していますが、国民年金の保険料は給料の多少にかかわらず一定です。一方、厚生年金の保険料については、「標準報酬月額」に保険料率をかけて計算されます。

「標準報酬月額」とは、給料の月額を区切りのよい幅で区分した等級で表したもので、32等級に分かれています。保険料率は一定のため、給料が上がり「標準報酬月額」の区分が上がれば上がるほど、厚生年金の保険料が高くなる仕組みです(上限有り)。

「標準報酬月額」は原則として毎年4月、5月、6月の3ヶ月間の給料(残業含む総支給額が基準)を基に計算され、ここで決まった金額がその年の9月から翌年の8月まで毎月支払う厚生年金の保険料となります。

そして、多くの企業では残業代はその月の残業時間を月末に確定させ、翌月に支払っています。つまり、3月に残業した分は4月の給料で、4月に残業した分は5月の給料で、5月に残業した分は6月に支払われます。そのため、3~5月に残業が多く4~6月の給料が増えれば、「標準報酬月額」の区分が上がり、厚生年金の保険料も上がるかもしれません。

3~5月に残業が多いと、保険料は年間でどれくらい増えるのか

3~5月に残業が多いと、保険料は年間でどれくらい増えるのでしょうか。これはどれくらい残業して、32区分ある「標準報酬月額」のどの位置からどの位置に上昇するのかによって異なります。

今回は、「標準報酬月額」が30万と34万円の場合を比較していきます。個人が負担する厚生年金の保険料率は一律で9.15%です。そのため、「標準報酬月額」が30万円と34万円の場合、毎月の保険料は次のとおりです。

__・30万円:30万円×9\.15%=2万7450円
・34万円:34万円×9.15%=3万1110円__

このように、「標準報酬月額」が30万円から34万円に上がれば、厚生年金の保険料は月額で3660円、年間で4万3920円上がってしまいます。

年金の保険料が多いと、将来受け取る年金受給額も増える

3~5月に残業が多いと、年金の保険料が増えてしまうと考えると、「この時期はできるだけ残業をしないようにしよう」と考える人もいるかもしれません。たしかに、「標準報酬月額」が増えれば、直近で年金の保険料が増えます。ただ、支払う年金の保険料が増えるということは、将来もらえる年金の受給額が増えることを意味します。

決して損しかしないというわけではない点は認識しておきましょう。

まとめ

3~5月に残業が多いと、厚生年金の保険料が上がってしまう可能性があります。とはいえ、年金の保険料が上がると、将来受け取る年金の受給額も増えます。

また、4~6月の給料を基に1年間の年金の保険料が決まるのが原則ですが、1年の途中で昇給などで給料に大幅な変動があった場合、途中で保険料が見直されることもあります。気になる人は一度自身の給料明細にて、年金の保険料の額を確認してみましょう。

出典

日本年金機構 国民年金保険料
日本年金機構 標準報酬月額は、いつどのように決まるのですか。
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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