【女性の60歳からの働き方】自分らしく無理せず長く働くには?[前編]

「体が元気なうちは働きたい」と考える人は少なくありません。でも、60代からの働き方ってどんなもの? 新しく仕事を探すなんて可能なの? そしてその心構えは? そんな疑問や不安に、定年後のセカンドキャリアに詳しい金澤美冬さんがお答えします。

お話を伺ったのは
金澤美冬さん

かなざわ・みふゆ●プロティアン株式会社代表。キャリアコーディネーター。
2004年早稲田大学政治経済学部卒業。
企業や大学でキャリア支援の経験を積み、18年より現職。定年を控える50代、60代の自律的なライフキャリアをサポートする。
定年前後のおじさん&オジサネーゼ(女性)のための「おじさんLCC(ライフキャリアコミュニティ)」を運営するなど、多彩な活動を行っている。

60代以降も働くことで「3K問題」が解消

「60代になっても働くことには、たくさんのメリットがあります」と金澤美冬さんは話す。金澤さんの周囲には、年齢に合わせて自分らしい働き方をする女性がたくさんいる。

「その姿を見ていると、働くことがシニアの『3K問題』にまつわる不安の解消につながっていると実感します。3Kとは、金・健康・孤独のこと。働けば、当然収入は増えます。体を動かすし、頭も使うので健康維持にもなる。そして仕事は社会との大切な接点です。『もう十分働いたからのんびりしたい』と言っていた人でも、しばらくすると『自分は誰からも求められていない』と孤独を感じ、働き始める人が多いのです」

とはいえ、60代になると健康面・体力面での不安も生まれる。

「若い頃と同じような働き方をしなくちゃ、とは思わないことです。これまで週5日、1日8時間働くのが当たり前だった方も、仕事内容を変えたり、働く回数を減らしたりすれば、無理なく元気に働き続けることは十分に可能です」

若い頃とは、仕事への心構えを変える必要があるということ?

「そうですね。若い頃は自分に向いている仕事、長く働き続けられる職場を求めたと思います。でも60代なら、働いてみて、合わないと思ったら別の仕事を探そう、というくらいの柔軟性があるほうがいいと思います」

シニア女性の職探しは男性より有利かも?

長く主婦だった人が、50代、60代で新たに仕事を見つけるのはハードルが高いのだろうか。

「実はそうでもないんです。『アルバイト感覚で、いろんな仕事を体験してみよう!』と考えている人は、すんなり決まることが多いですね。好奇心や柔軟性は、同世代の男性より女性のほうが高い傾向にあるようで、未経験でもすぐ仕事が決まるのは女性のほうが多いようです」

主婦の経験を生かせる仕事も多いと金澤さんは言う。

「弁当や総菜の調理、レストランのキッチン業務、ベビーシッターや保育の仕事などの求人は多いですよ。最初は『人さまの子どもの世話なんて自信がない』と言っていた人でも、実際に働き始めると、『赤ちゃんはかわいいし、親御さんには感謝されるし、毎日楽しいです』と満足しています。キッチン業務に携わる人は、『わが子より若い仲間と仕事をするのが刺激的です』と楽しそうです」

一般的にはマンション管理、清掃、調理、介護、保育補助などの求人が多いようだが、事務などのデスクワークにつくのは難しいのだろうか。

「事務系は求人そのものが少なく、希望者も多いので簡単ではありません。『若い頃に事務をしていた』といっても、現在の事務はワードやエクセルを使えることが大前提。自分なりに努力して準備をすることで、チャンスは広がると思います」

そして金澤さんが考える最も大切なことは、「迷っていないで、動き始めること」。

「年齢が若い人から採用されていくという側面は否定できません。そう考えると、60代の1~2年は大きいですよね。迷っているなら、まずは動き始めましょう。考えるのは動きながらでもできますよ!」

雑誌「ゆうゆう」読者に聞きました【60歳以上のお仕事事情①】

収入を得ることだけが仕事の価値だと思っているのではなく、「社会とつながることができる」「やりがいを感じられる」ことに魅力を感じている人が多い。

60代以上の場合、正社員・正規の職員として雇用されるケースは少ないのが現実だ。やはり最も多かったのはパート・アルバイト。

学校の図書館司書や学生寮の管理、英会話講師など「教育・学習支援」が第1位。病院での物品管理や看護師など「医療・福祉」がそれに続いた。

【後編に続く】

※この記事は「ゆうゆう」2024年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

取材・文/神 素子


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