【高齢者の賃貸入居】賃貸オーナーの本音はいかに?「高齢者向け賃貸に関する実態調査」を解説

住まい探しに苦労し、確保につながるように配慮が必要な人を住宅確保要配慮者と呼びます。一人親世帯、外国人などあげられますが、高齢者も該当しています。「高齢者は賃貸住宅に入居しにくい」という声を聞いたことがある人は多いでしょう。

そのような状況を物語る調査結果が発表されました。65歳からのお部屋探しを専門で支援する(株)R65は、全国の賃貸オーナーを対象に「高齢者向け賃貸に関する実態調査」を実施。賃貸オーナーの本音から高齢者と賃貸住宅の現状が明らかになりました。

賃貸オーナーに聞いた「高齢者の賃貸入居」に対する本音

高齢者(65歳以上)の入居の受け入れについて

賃貸オーナーに高齢者の入居の受け入れについて尋ねると、最多は「受け入れていない」で41.8%となりました。次いで「どちらかといえば受け入れている(39.0%)」、「積極的に受け入れている」は2割以下(19.0%)に留まりました。

同社の調査によると、不動産会社の4社に1社(25.7%)が高齢者の入居可能な賃貸住宅が「全くない(0%)」ことが判明しました。

その一方で、賃貸オーナーの6割が高齢者の受け入れを拒否していないことも明らかになっています。このことから、不動産会社側にも一定の課題があると考えられます。

高齢者の入居に関する対策やサービスの認知度について

高齢者の入居に際して、知っている対策やサービスの認知度について調べました。その結果、全体の35.0%が高齢者入居向けの対策やサービスを「知らない」ことがわかりました。それと同時に、高齢者の受け入れに消極的な賃貸オーナーであるほど「知らない」傾向であり、高齢者の入居を「受け入れていない」賃貸オーナーの5割以上(55.0%)が「知らない」と回答。これは「積極的に受け入れている」賃貸オーナーの約4倍(3.8)です。

また、最も知られている対策やサービスは「定期訪問や駆けつけで安否確認を行う見守りサービス(33.4%)」でした。最近では地域と民間企業が連携した高齢者の見守りサービスが生まれているので、認知度が高まっているのかもしれません。

以上の結果から、高齢者入居の促進には賃貸オーナーが不安視する孤独死や家賃回収などを解消する方法を知る必要性があると考えられます。認知度を高めることが喫緊の課題とも言えるでしょう。

では、実際に入居を受け入れている賃貸オーナーはどのような対策やサービスを取り入れているのでしょうか。

高齢者の入居を「受け入れている」賃貸オーナー全体の約3割が「定期訪問や駆けつけで安否確認を行う見守りサービス(30.2%)」や「ICTを活用して安否確認を行う見守りサービス(29.6%)」、「残置物処理や賃貸借契約の解除を円滑に行うための契約(29.2%)」を導入・実施していることがわかりました。また、高齢者の入居を「積極的に受け入れている」賃貸オーナーはいずれかの対策やサービスを導入している割合が10%ほど高い結果となりました。

その一方で、全体の約3割(29.9%)が「特に何もしていない」状態で、「積極的に受け入れている」賃貸オーナーでも2割以上(23.4%)を占めていることがわかりました。

高齢者の入居において不動産管理会社に対する期待度について

高齢者の入居に対して、賃貸オーナーは不動産管理会社に何か期待を持っているのでしょうか。

「高齢者の入居を拒まない不動産管理会社」に管理してほしいと考える賃貸オーナーが4割以上(42.2%)、「どちらとも言えない」と回答する賃貸オーナーは40.0%となりました。また、高齢者の入居を「受け入れていない」賃貸オーナーにおいても、「いいえ」が約3割(28.2%)、「はい」と回答した方が2割以上(22.0%)となりました。

以上の結果から、高齢者の入居を拒まない不動産管理会社に対して一定の期待を持つ様子が見受けられます。不動産管理会社が高齢者の入居に対して積極的な姿勢を示すことが、高齢者の住居を高めるポイントになると言えます。

高齢者の入居におけるサポートの希望について

では、不動産管理会社や居住支援法人などからの高齢者入居に関するサポートがあれば、受け入れたいと考える賃貸オーナーはどれくらいいるのでしょうか。

全体のうち、高齢者を「受け入れたい」と考える賃貸オーナーが4割以上(43.8%)となりました。内訳は「積極的に受け入れたい」方が16.0%、「どちらかといえば受け入れたい」方が27.8%となっています。

また、高齢者の入居を「受け入れていない」賃貸オーナーは、「受け入れたい」と考える方が25.1%、「どちらとも言えない」と回答した方は、42.0%と全体よりも多い結果となりました。

この結果から、積極的な高齢者入居サポートがあれば、高齢者の入居が一定促進されることがわかりました。しかし、「どちらとも言えない」賃貸オーナーも多数いるため、今後高齢者入居に関する成功事例を積み重ねて賃貸オーナーの不安を払拭する必要があると考えられます。

高齢者の賃貸入居を促す住まいとして期待が高まる「居住サポート住宅」

調査結果から、高齢者の入居促進には以下の2点が必須と言えます。

・さらに多くの賃貸オーナーが高齢者の入居に関わる対策やサービスを知ること
・不動産管理会社が高齢者の入居に対して積極的になること

しかし、国も何もせずに見過ごしているわけではありません。

岸田内閣は3月に、社会福祉法人やNPO法人等の見守りサービスが付いた住まい「居住サポート住宅」の規定を盛り込んだ法案を通常国会に提出し、注目が集まっています。また、民間企業でも先行して「見守りサービスが付き高齢者向け賃貸住宅」の供給が活発化しています。

人生100年時代において、このような物件が増やすことが不動産管理会社の役割と言えるでしょう。今後さらに増えていくことを期待するのみです。

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