ナノプラスチックに含まれる化学物質で子宮内膜症や流産の可能性も…市販の弁当容器、ペットボトルから数百万個レベルで溶け出す

「これまでの研究で、環境中にプラスチック粒子が数多く存在していることはわかっていました。それが、人体に入り込んでいないか、そういった懸念から調査を開始したんです」

こう語るのは、東京農工大学の高田秀重教授。

高田教授らのグループは2月28日に、その分析結果を発表。果たして、日本国内の検体11人中4人の血液の中から、目で見ることができない微細なプラスチック粒子が検出された。さらに、このうち1人を詳しく調べると、血液や腎臓、肝臓などから、プラスチックに添加される有害化学物質も見つかったという。

鼻にプラスチックストローが突き刺さったウミガメ、体内から大量のビニール袋が出てくる魚……そんな映像を見て胸を痛めた人も多いはず。海洋生物を守り環境を保全するため、脱プラスチックが叫ばれて久しいが、プラスチックの微粒子はすでに人体をも蝕む。

1千分の1~5mmのプラスチック粒子は「マイクロプラスチック」、さらに1千分の1mmより小さい微粒子は「ナノプラスチック」と呼ばれる。どんな経路で、これらの微粒子が人の体内に入るのだろうか。

■市販の食べ物や飲み物と一緒に体内に侵入……

「たとえばペットボトル。プラスチックは光で劣化し、粒子が飲料に溶け出ます。1本あたり100万個のナノプラスチックを検出という研究結果も最近報告されています」

プラスチック製の密閉容器や、市販の弁当容器などからも。

「容器に水を入れ電子レンジに3分かけると、数百万のマイクロプラスチック、ナノプラスチックが発生したという論文もあります」

そのほか魚や貝など海産物を食べて体内に入る可能性も低くない。

「人体に入るルートはいくらでもあります。それぞれのルートがどれほど影響しているのかは、今後、調べる必要があると思います」

体内に入り込んだプラスチックは健康にどんな影響を及ぼすのか。高田教授は「今回の検出量はわずかで直ちに影響が出るレベルではない」と前置きしつつこう続ける。

「海外の論文ですが、マイクロプラスチックは血管を詰まらせ、心臓発作や脳卒中といったリスクが高まる、という研究結果が報告されています」

今回、高田教授らの調査で検出された、プラスチックの添加剤も健康被害の可能性があるという。

「今回見つかったのは、光による分解を防ぐためにプラスチックに添加される紫外線吸収剤。この物質の人体への影響は主に2つ考えられていて、1つは女性ホルモンの受容体とくっつくことでホルモンバランスを崩し、生殖機能が異常を来す可能性。もう1つは免疫力低下の可能性です」

プラスチックに含まれる化学物質が子宮内膜症や乳がんを引き起こす疑いもあるという。高田教授は環境省の疫学調査の結果を例に、こう言葉を継いだ。

「約10万人の妊産婦を調査したものですが、週に2回以上市販の弁当や冷凍食品を食べた妊婦は、それ以下の人と比べ2倍以上流産死産の割合が高い。さまざまな原因が考えられますが、容器のプラスチックに添加剤が含まれているのは事実で、その添加剤に生殖異常を引き起こす物質が含まれているのは間違いありません。女性の方は食生活に注意してほしいですね」

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