10代で日本代表…スーパーエリート育成の道 優れた大卒ルートは確立、次は早期育成ルート【コラム】

「ロマーリオ2世」と期待される17歳のエンドリッキ【写真:ロイター】

スペイン対ブラジル戦で際立った10代選手の活躍、日本で珍しい10代の代表デビュー

スペイン代表とブラジル代表の強化試合は3-3。アディショナルタイムに得たPKをパケタが決めて辛うじてドローに持ち込んだブラジルだが、イングランド戦に続いてエンドリッキが得点を決めている。

エンドリッキは「ロマーリオ2世」と期待される17歳のFW。173センチと大柄ではないが俊敏でテクニックに優れ、なんといっても得点能力の高さが注目されている。来季はパルメイラスからレアル・マドリードへの移籍がすでに決まっている。

この試合ではスペイン代表のラミン・ヤマルも活躍していた。バルセロナのウイングはまだ16歳。終盤に交代出場したパウ・クバルシも17歳。この2人はともにバルセロナの下部組織出身である。

10代の選手がブラジル、スペインの代表チームで活躍しているのは驚きではあるが、最高レベルの選手はだいたい10代で代表デビューしている。ブラジルのロドリゴ、ヴィニシウスがそうだったし、古くは1958年ワールドカップでスターになったペレは17歳だった。

日本代表では市川大祐、久保建英が10代で代表デビューしているが、かなり珍しい例で欧州や南米ほど多くない。一方、大学卒の選手が多いのは日本の特徴だ。

三笘薫は大卒選手としてイングランドで話題になっていた。大学スポーツが盛んな米国や日本と違って、欧州や南米では大卒選手がほとんどいない。むしろ22歳でプロになるほうが珍しいのだ。

日本代表の大卒選手は多く、旗手怜央、谷口彰悟、伊東純也、長友佑都、上田綺世、相馬勇紀、守田英正などがいる。Jリーグにも大卒選手は多い。もともと才能はあったにせよ、大学時代に急成長したケースがほとんどで、高卒でプロになっていたら埋もれていたかもしれない。そういう意味では、大学サッカーの貢献は大きく、人材育成において欧州、南米にはない優れたシステムということもできる。

育成における欧州南米型、米国日本型はそれぞれ一長一短あるわけだが、日本が力を入れていくべきなのは10代で代表入りするようなスーパーエリートの育成だろう。すでに大卒ルートは確立しているので、それとは別に早期育成のルートを作れば完全になる。

ヤマルとクバルシはバルセロナのシャビ監督がトップに抜擢した。クバルシに関してはBチームでレギュラーポジションを獲れていない状態でトップに合流させている。かつてヨハン・クライフ監督がBチームで燻ぶっていたジョゼップ・グアルディオラを引き上げたのと同じで、指導者の眼がモノを言う。

スーパーエリートは育てられるものではない。かといって、誰が見てもスーパーな才能に気づくわけでもなく、まずは良い眼を持った指導者を育成することが先決になるようだ。(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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