「最期は自宅で…」と願っても…全国7万人「死ぬ場所にさえ苦労する」日本の高齢者の厳しすぎる現実

高齢者の基本的な生活の状況、住宅と生活環境に関する状況を把握するために行われた、『令和5年度 高齢社会対策総合調査』。結果を読み解いていくと、日本の高齢者が直面する住宅問題がみえてきました。

高齢者の45%「最期は自宅で迎えたい」

内閣府が65歳以上の男女を対象に行った『令和5年度 高齢社会対策総合調査』によると、8つの日常行動について「できる」「できるがしていない」「できない」で回答する設問において、「できない」が多かったのが「階段を手すりや壁をつたわらずに昇っている」で、高齢者の5人に1人の水準。また年齢別にみていくと、70代前半で11.1%、70代後半で18.3%だったのが、80代前半では32.7%、80代後半で56.3%と、80代を境に足腰が急激に衰えていく……日本の高齢者の実態を垣間見ることができます。

【高齢者の日常生活「できない」こと】

階段を手すりや壁をつたわらずに昇る…20.5%

椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がる…15.6%

バスや電車、自家用車、バイク、シニア カーを使って1人で外出する…12.2%

自分で食事の用意をする…12.1%

15分位続けて歩く…11.4%

自分で食品・日用品の買物をする…9.7%

自分で請求書の支払いをする…9.6%

自分で預貯金の出し入れをする…8.9%

そんな高齢者に対して、「万一、治る見込みがない病気になった場合、最期はどこで迎えたいですか」と質問。全体では最多が「自宅」で45.8%と半数近くを占めます。男女別にみていくと、「自宅」の回答は、男性が52.2%、女性が40.1%。平均寿命から考えると、男性のほうが寿命は短く、夫婦においては夫を看取ってから、次は妻の番となります。看取る大変さを経験したことで、「自分の最期は自宅以外で」という意識になるのかもしれません。

【高齢者に聞いた「最期はどこで迎えたいか」】

自宅…45.8%

病院・介護療養型医療施設…36.3%

特別養護老人ホーム・有料老人ホームなどの福祉施設…8.3%

サービス付き高齢者向け住宅…2.6%

今は別居している子・親族などの家…3.0%

あなたには貸せません…「賃貸住宅の審査落ちを経験した高齢者」全国で7万人

男女差はあれど、「最期は自宅」が支持されているなか、高齢者の現状の住居形態で最多は「持ち家(一戸建て)」で76.2%。「持ち家」全体で8割を超えます。希望を叶えるベースは整っているケースが多数といえます。

【高齢者の現在の住居形態】

持ち家(一戸建て)…76.2%

持ち家(分譲マンション等の集合住宅)…8.3%

賃貸住宅(民営のアパート・マンション)…5.9%

賃貸住宅(公営・公社・UR等の集合住宅)…4.5%

賃貸住宅(一戸建て)…2.4%

高齢者向け住宅…0.4%

一方で高齢者の賃貸派で不安なのが「家なしリスク」。「65歳になってから今までに入居を断られたことがありますか」の問いに、「ある」は1.5%。かなりの少数派。2023年9月15日現在、日本の高齢者は推計で3,623万人。賃貸派は12.8%から計算していくと、実数は463万7,440人。そのうち「借りたくても借りられなかった」という経験のある高齢者は全国で7万人にも及ぶ計算です。

さらに収入別にみていくと、月10万~15万円未満では1.0%なのに対し、月5万~10万円未満では5.6%、月5万円未満では7.4%。高齢者の生活を支える収入の多くが年金ですが、「入居を断られるかどうか」、年金月10万円未満がひとつのボーダーラインとなり、年金5万円未満では13人に1人の割合で「家なしリスク」に直面することになります。

年金10万円未満で跳ね上がる高齢者の家なしリスク。低収入が審査の通過を難しくしているなら、生活保護を受けることで解決できる場合も。

たとえば東京23区の場合、生活扶助基準額は7万6,880円、住宅扶助基準額が5万3,700円。合計の生活保護費は13万0,580円です。仮に年金月5万円で、貯蓄も最低生活費以下、十分に働くこともできないと判断されたら、差額となる月8万円ほどの生活保護費を受け取れる可能性があります。収入を不安視して「家を貸せません」と拒否した大家にとって、生活保護を受けることで収入が安定した高齢者であれば「貸せる」という判断ができるかもしれません。

[参考資料]

内閣府『令和5年度 高齢社会対策総合調査』

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