「メタファーとしても不適切」「広島・長崎に来て被爆者と対話を」米下院議員の原爆投下発言めぐり原水禁が会見 広島

イスラエル軍が爆撃を続けるパレスチナ自治区ガザ地区について、原爆投下を促すような発言をしたアメリカの下院議員に対して、広島県平和運動センターと原水禁が撤回を求める要請書を送りました。

この問題は、アメリカ議会のティム・ウォルバーグ下院議員(共和党)が、イスラエル軍とイスラム組織ハマスが戦闘を続けているパレスチナ自治区・ガザに対する人道支援に反対する文脈で、「広島や長崎のようにすべきだ」と原爆投下を促すような発言をしたことに端を発しています。

アメリカメディアによると、発言に批判が相次いだことから、ウォルバーグ下院議員は、「イスラエルやウクライナが早期に勝利する必要があるということを伝えるための比喩だった」と発表したということです。

広島県原水禁 秋葉忠利 代表委員(前広島市長)
「メタファーとして使った、使ったんだということで、それが広島・長崎にとっては実はとても大きな問題で、同時に核廃絶の問題にもつながっていますので、きちんと私たちの立場を述べて、理解を深めるという視点が大事」

広島県平和運動センターと広島県原水禁は、会見で、原爆投下が「戦争終結を早めた」や「米軍や日本人の犠牲を少なくした」という考えは事実ではないと数々の歴史家が指摘していることなどを紹介。

下院議員の発言とその後の説明について、「戦闘の早期終結により、多くの人命が失われることを避ける」という部分には賛成するとしながらも、戦争終結や命の救済の比喩として「広島・長崎」を使うことは不適切であるとして、撤回を求めました。

さらに、最終的には、原爆投下の結果、被爆者が長期にわたり放射線障害や社会的被害に苦しめられてきたことを理解してもらうことが重要として、ウォルバーグ下院議員に、「真に罪のない人たちが戦争に巻き込まれることを避けたいと願っているのであれば」として広島・長崎への訪問と、被爆者との対話を勧めています。

会見の後、この撤回を求める書簡は、FAXで議院の事務所に送付されました。

広島県原水禁 秋葉忠利代表委員(前広島市長)
「アメリカの世論が、圧倒的に広島、長崎への原爆投下は正しかったって信じているのに、核兵器の廃絶っていうのはまず無理です。だから、アメリカの世論を変えていく」

秋葉氏らは、核兵器廃絶のためにも、事実を知らしめてアメリカの世論を変えていく必要があり、そのためにも撤回を求めるとしています。

さらに、ちょうど訪米中の、「被爆地選出」を掲げる岸田総理が、この件に関して、何かしらの声を挙げてくれることを期待している、とも話しました。

また、広島県被団協の佐久間邦彦理事長は、下院議員の発言に抗議する声明を発表しました。

© 株式会社中国放送