猪子寿之の“権力者たちに向けた言葉”に成田が感動 「見事に期待を裏切られた」

2018年、東京・お台場にオープンし、初年度350万人超の来館者を記録した『チームラボボーダレス』が今年2月9日、東京・麻布台ヒルズに『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』として移転オープンした。制作はもちろんteamLab(チームラボ)。経済学者の成田悠輔は、チームラボ代表・猪子寿之にオープン前のミュージアムという異空間で対談。アートからチームラボのビジネスモデルまで、気になることすべてを猪子に質問しまくった。

未来の日本を作る変革者=PLAYERSと成田が対談する番組『夜明け前のPLAYERS』の収録で向き合った2人だが、成田には「テレビモードを解除して、猪子さんの不規則発言を引き出そう」という目論見があった。そのため成田が最後に選んだ質問は「権力者たちに何か言いたいことはないか」というものだった。

言いたいことは人口問題の解決だけ 「人口は経済や文化の発展の原理原則に近いから」

チームラボはアートと観光とITデジタルの間に存在するとし、その領域において日本は頑張ろうとしつつもうまくいっていないと指摘。「そういう偉い人たちの会議や戦略と、多分全く関係のないところから現れたチームラボだけが爆走している」と投げかけた。

それまでも幾度となく成田からとがった質問を投げかけられ、やんわりかわしてきた猪子だったがとうとう「いろんなトゲをばらまきながらしゃべるのは止めて」と苦笑い。「そういうのは知性の無駄遣いって言うんですよ。知性を持って生まれたんだから、しかも努力して知性を育てたんだから、そういうことで知性を使っちゃいけないね」とぴしゃり。

叱られてうれしそうな成田は改めて「真面目にアート政策みたいなことについて考えると、日本の法律や仕組みで、これは問題じゃないかと思うものってありますか」と問い直した。

改めてじっくり考えた猪子は「人口問題が全てじゃないですか」と答える。「ありとあらゆる手段、あるいは法的なレベルを下げて、もしくは法の概念を変えて、人口問題に取り組むこと。人口問題以外に何も取り組まなくてもいい。人口問題がこのままで、何かに取り組んだところでポーズでしかなくなってしまうと思います」と言う猪子を、成田はじっと見つめゆっくりうなずいた。

さらに猪子が続けたのは「10番目ぐらいの話として、社会が寛容になったらいいな」ということ。「法を超越した不寛容さはこの社会からなくなったほうがいいと思います。法治国家ですから、法に携わる人以外が人を罰するべきではないし、人を批判するべきではないと思う」と静かに言う。法を超えて倫理観が大きくなっていくことが社会を破壊すると憂いている様子だ。

成田は「僕、今ちょっと感動したんですけど」ともらした。アート周りの法律や制度についてのコメントとして「こういう規制やこういう法律に邪魔をされているっておっしゃってくれるんじゃないかと期待していたんですよ。それが見事に裏切られたことにちょっと感動してて」と、“邪魔される”といった意識は猪子にとって優先度が高くないのだと知ったと言う。

「この社会がいい社会を維持するためには、人口問題を解決しなければ何をしてもただ滅ぶだけになっちゃう。社会が滅ばなければ人々はいろいろなことができるけれど、社会が滅んでしまえば何もできない。社会があって営みがある」と猪子。

成田は「その通りだなと思います」と言い、「本質的な世界と人類の問題がさっと出てくるのが猪子さんらしいな」と感動すると「人口は、経済の成長とか文化の成長とかの原理原則に近いですからね」と猪子。「その原理原則に目を向け続ける秘訣(ひけつ)はありますか?」と成田が問うと、「人の話を聞かないとか、空気読まないとかですかね」と猪子は笑った。

「大事っすね」と同調する成田は「猪子さんの話を無視してトゲを発し続けた僕のスタイルも間違ってはいなかったんだなと思った次第です」と発言。猪子も「実は私、大尊敬していますよ」とコメントした。

本対談は『夜明け前のPLAYERS』公式HPでノーカット版が、公式YouTubeでディレクターズカット版が配信されている。

「夜明け前のPLAYERS」
公式HP:PLAY VIDEO STORES
公式YouTubeはこちら

写真提供:(C)日テレ

© 株式会社 日テレ アックスオン