村上春樹原作のアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』不穏な日本版ビジュアル公開

村上春樹さん原作の長編アニメーション映画『めくらやなぎと眠る女』が、7月26日(金)にユーロスペース他にて全国公開されることが決定。併せて、日本版ビジュアル・予告編も解禁された。

日本版ビジュアルには、原作読者からも人気が高いかえるくんの中に、小村、片桐、キョウコら本編登場キャラクターが描かれている。

また、村上春樹作品ファンにはお馴染みの猫(ワタナベノボル)がかえるくんに寄り添い、不穏さとミステリアスさを漂わせたビジュアルとなっている。

アニメ映画『めくらやなぎと眠る女』とは?

『めくらやなぎと眠る女』は、フランス人音楽家/アニメーション作家・ピエール・フォルデスさんにとって、初の長編アニメーション監督作品。

村上春樹さんの6つの短編である「かえるくん、東京を救う」「バースデイ・ガール」「かいつぶり」「ねじまき鳥と火曜日の女たち」「UFOが釧路に降りる」「めくらやなぎと、眠る女」を翻案し、オリジナル脚本を制作・アニメ化した内容となっている。

作品の舞台は、2011年の東日本大震災から数日後の東京。地震の幻影に囚われたキョウコ、小村、片桐の3人が、記憶と夢と幻想の世界での出来事を通じて、本当の自分を再発見しようとする物語だ。

今回公開された予告映像からは、アニメーションと音楽によって独特の不穏かつミステリアスなムードが描かれていることが伝わってくる。

【ピエール・フォルデス監督コメント】
平凡な日常世界において、現実と内面の両方で起こった劇的な出来事によってその 世界が揺るがされるちょっとマジカルな物語を、独自の方法で語りたかったのだ。マジック リアリズム的世界観でこの精神生活を見せるには、アニメーションは完全な手法だと感じている。なぜなら全てを一から作り直す必要があり、それが現実とのずれを生みだすからだ。このずらしと転移の必要性が私の監督として のアプローチには不可欠なのだ。

"村上ワールド"全開、国内外で高い評価を集め日本公開へ

2022年にフランス、カナダ、オランダ、ルクセンブルクの4か国によって共同制作された『めくらやなぎと眠る女』は、2022年6月に「アヌシー国際アニメーション映画祭」の長篇部門で審査員特別賞を受賞。

2023年3月に初開催された「第1回新潟国際アニメーション映画祭」ではグランプリに輝いた。

同映画祭で審査員をつとめた押井守さんは受賞理由を、「現代文学を表現する最適のスタイルなんじゃないかということで、3人の審査員の意見が一致した、唯一の作品」と説明。

なお、ピエール・フォルデス監督は劇中音楽も担当しており、「レザルク・ヨーロッパ映画祭」で作曲賞を受賞するなど、アニメーション・音楽ともに高く評価されている。

前述した新潟国際アニメーション映画祭の時点では、プロデューサーのピエール・ボサロンさんが「日本での公開を交渉中」と明かしていたが、念願叶っての日本公開となった。

今回、予告編と日本版ビジュアルの解禁に併せて、村上春樹さんとの共著でも知られる米文学者/翻訳家の柴田元幸さんから、作品に関するコメントが届いている。

【柴田元幸さん(米文学者・翻訳家)コメント】
どんな物語も映画も多かれ少なかれ、現実と想像、外界と内面、現(うつつ)と夢とのあいだにいつのまにか建てられてし
まった門を開けてくれる装置であるわけだが、この映画はその役割をとりわけしなやかに、深く軽やかに果たしてみせる。

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