メタリカ、夏の欧州ツアーの機材運搬に水素燃料電池トレーラーを導入。イタリアのトラックメーカーIvecoと提携

Image:Iveco

ヘヴィメタルバンドのメタリカは今夏、14の都市で行う欧州ツアーで、コンサート機材を運搬するトレーラーに水素燃料電池式、および電池駆動式の電動トレーラーを使用し、大量の機材運搬から生じるCO2の排出削減に貢献する。

これはイタリアの大型トラックメーカーIvecoとの提携によるものだ。Ivecoはツアー会場間の機材輸送にS-eWay電動セミトラックを、さらに会場での移動用に圧縮天然ガス(CNG)仕様のDailyシャトルバスを提供することになっている。

ちなみに、天然ガスは化石燃料の中でCO2の排気量が最も少なく、また煤塵、SOxの排出もほとんどないためクリーンエネルギーのひとつとされる。

メタリカは、その攻撃的な音楽性や、ところ構わず唾を吐きステージ上を大股で闊歩するバンドメンバーのイメージとは裏腹に、「All Within My Hands(AWMH))」基金を設立してツアー中にその地域のフードバンクを支援したり、コミュニティカレッジの学生を支援する「Metallica Scholars」への資金提供と言った活動を行っている。今回の欧州ツアーにおけるCO2削減の取り組みも、このような活動の一環としてのものだ。

Ivecoによると、これらの “グリーン” なトラックやバンの使用は、メタリカが各コンサートで排出する二酸化炭素量を削減するという目標を達成し、全体的により持続可能なショー体験を提供するのに役立つという。

ちなみに、近年の音楽業界は、CDその他の媒体を大量に販売する収益構造がネット配信やストリーミングによって弱体化し、ライブコンサートの数や規模を増大する方向に様変わりしている。

たとえば、世界の頂点に立つ音楽アーティストのひとりであるテイラー・スウィフトのコンサートツアーは、その規模もとてつもないものになっており、彼女の全米ツアー機材を運ぶトレーラーの数は50~90台にもなるのだという。それらがすべてディーゼル車なのか、電動トラックも含まれるのかはわからないが、そのCO2排出量は相当なものだと想像できる。

加えて、スウィフトは自身の移動のために2機のプライベートジェットを所有し、2022年上半期だけで、それらを170回以上使用し、一般的な家庭の165倍以上のCO2を排出したと伝えられていた

メタリカが使用する水素燃料電池車も、細かいことを言えば輸送用燃料としての水素の生産にどれぐらいのエネルギーが消費されているかといった話がつきまとうこともあるが、少なくとも機材輸送過程においてのCO2やその他の汚染物質排出は大幅に削減されることになるだろう。

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