問題引き起こす大量飲酒 アルコール依存症は平均寿命52歳の重篤な病気 早めに専門医療機関の受診を

[命ぐすい耳ぐすい 沖縄県医師会編](1329)

 飲酒は社会に広く普及した習慣であり、日本でも男性の83%、女性の60%は飲酒経験があるとされる。ほとんどの飲酒者は程良くお酒と付き合っており、人間関係でも仕事の上でもプラスになることが多い。

 一方、大量飲酒は肝障害や脳畏縮、高血圧や糖尿病など200以上の健康問題に関係しており、問題飲酒が悪化して依存症に至ると、一日中酒が抜けない、運転や仕事前の飲酒、飲酒による対人関係の悪化、仕事の効率低下、欠勤、お酒が抜ける時の手の震えや発汗、不安やいらいら、血圧上昇、発熱、幻覚、けいれんなどさまざまな問題が出現し、深刻化していく。

 こうなってくるとただの酒飲みではなく、アルコール依存症という平均寿命52歳の重篤な病気で、専門治療が必要となる。

 しかし残念ながら来院時には病気がかなり進行し、治療に難渋するケースが多い。一番の依存症対策は飲み過ぎないことである。

 厚生労働省の健康日本21(第1次)では、健康リスクの少ない飲酒量として1日平均でビールなら500ミリリットル、缶チューハイなら350ミリリットル程度とするよう推奨している。お酒好きには厳しい目標だが、最新の研究では、もっと少ない量(ビール350ミリリットル)以下にとどめるべきだとする報告もある。

 特に女性や体の小さい(肝臓が小さい)人、少量のお酒でも顔が赤くなりやすい人は、体への影響が出やすいため注意が必要である。

 また、いったん依存症になった場合は早めに依存症専門医療機関を受診することが大切である。病気に対する偏見もあり、依存症者の中で治療に結び付いている人は2割程度とハードルは高いが、依存症になるかならないかは、生まれつきの体質(遺伝)によるところが大きい。

 病気になったことを恥じる必要は全くない。他の生活習慣病と同じように、早期発見・早期治療で心身の健康回復を図っていただきたい。(真栄里仁、国立病院機構琉球病院精神科=金武町)

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