【湘南】苦悩の日々を乗り越えた石井久継。飛躍のきっかけを掴んだ背景に先輩のサポート「支えてくれている人が本当に多い」

「開幕直後は、正直、戦える気がしなかった」

今季に湘南ベルマーレU-18から昇格した石井久継は、苦悩の日々を過ごしていた。

石井は昨季に2種登録として公式戦8試合に出場。天皇杯3回戦のファジアーノ岡山戦でプロ初得点を挙げるなど、非凡な才能の片鱗を示した。

だが、ルーキーとして迎えた2024年シーズンは開幕からベンチ外が続いた。昨季の主戦場である2トップの一角だけではなく、今季からチームで取り組む4-4-2のサイドハーフでも準備をしたが、出番は一向に訪れず。次第に、自信も薄れていったという。

「一時期は、自分がメンバーに選ばれたところで、他の選手と比べて違いを見せられないと思っていました」

それでも気持ちは折れずにトレーニングを重ねた日々の姿勢を、山口智監督に評価されたのだろう。6節の東京ヴェルディ戦で今季初のメンバー入りを果たすと、最終盤に出場機会を得た。

さらに、続くサンフレッチェ広島戦でも途中出場すると、退場者が出た苦しい展開のなか、左サイドからの果敢な仕掛けでチャンスメイク。本人は「結局ゴールにはつながっていない」と悔やんだが、広島戦での石井のプレーは、数的不利のチームに希望を与えるものだったはずだ。

「練習から自分の良さを追求した結果、徐々に違いを出せるようになってきたんです。広島戦でのプレーは、手応えを得られた部分もありました」

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自分らしさを出せるようになってきた背景には、頼れる先輩のサポートがあった。

「(田中)聡君や(平岡)大陽君が相談に乗ってくれています。ヴェルディ戦で久々のメンバー入りが決まった時、急だったので、すごく緊張してしまって。大陽君に『緊張してきたから、ご飯に行こう』と誘って、連れて行ってもらいました。

聡君にも『やっとメンバーに選ばれた』とすぐに連絡したら『良い流れだね』とメッセージをくれた。ヴェルディ戦で良さを出せなかった時も、『考えすぎじゃない?』と言ってくれたおかげで、広島戦では感覚的なプレーが上手くいった。支えてくれている人が本当に多いんです。数年後、自分もそんな先輩になりたい」

世代別代表の経験を持つパリ五輪世代の先輩が、ロス五輪世代である石井に手本を示す。彼らのサポートを受け、18歳の至宝が飛躍を見せれば、中堅やベテラン組も含めて熾烈な競争が巻き起こるはずだ。現在18位と苦しむなかでも、チーム内には良い循環があるように見える。

新進気鋭の77番が、残留争いからの脱却と上位進出のキーマンとなるか。「湘南サポーターが喜ぶ姿を見るために、ゴールに向かっていく」と意気込むアタッカーの成長から目が離せない。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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