「リニア中央新幹線」2027年の開業断念…その理由とリニアを巡る状況、停車駅がない静岡県へのメリットは?

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。4月4日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「リニア中央新幹線、2027年の開業断念」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

山梨県立リニア見学センターのリニア新幹線

◆リニア中央新幹線の歴史

JR東海は3月29日(金)、静岡県が着工を認めていない「リニア中央新幹線」について、国の専門家の会議で目指してきた2027年の開業を断念する方針を明らかにしました。斉藤鉄夫国土交通大臣は「開業目標が実現できないことは非常に残念だ」と述べ、早期の開業に向けて静岡県とJR東海に対話を促す考えを示しています。

ユージ:塚越さん、まずは「リニア中央新幹線」について教えてください。

塚越:リニア中央新幹線の歴史は古く、東海道新幹線開通前の1962年から、東京-大阪間を1時間で結ぶことを目指した次世代の超高速鉄道として「リニアモーター推進浮上式鉄道」の研究がはじまっています。今から60年以上前の話ですが、実は1972年には浮上走行に成功しており、その後もいろいろと研究は続いています。

現在、リニア中央新幹線の最高速度は時速500kmを超えるということで、品川-名古屋間を40分、東京-大阪間を1時間7分で走ります。現在の東海道・山陽新幹線「のぞみ」は、最高速度285kmで東京-大阪間は2時間21分かかるので、所要時間がおよそ半分になるということです。

ユージ:この時短はかなり魅力的ですね。僕は毎週仕事で名古屋に行くので、40分で行けるようになったらうれしいです!

◆2027年の開業延期…「静岡工区」の遅れが理由

ユージ:静岡県が着工を認めていないということで、もともと2027年に目指していた開業が延期になっているんですね。

塚越:JR東海側は、開業の遅れを「静岡工区の遅れ」としています。静岡での工事には10年程度かかるとしており、仮に今すぐ着工できても開業は2034年以降になる計算です。

一方、静岡県の川勝平太知事(※先日辞職を表明し、4月10日(水)に静岡県議会議長に退職届を提出)は、リニアの工事で静岡の大井川の水資源や南アルプスの生態系への影響、さらに工事で出る土砂の問題などを危惧しており、何度かJR東海側と話し合いもしているのですが、工事の着工を認めていないということです。

ユージ:リニア開業のために、JR東海と静岡県の話し合いを進めてもらいたいところですね。

塚越:静岡県の森貴志副知事は、スピード感をもって進めていきたいという意思表示はしているのですが、やはりクリアすべき問題はあると指摘しています。水資源と生態系の影響について今後も県の専門部会で議論を続けるとしており、JR東海との対話も進めるとのことですが、なかなか溝は埋まっていないとのことです。

◆停車駅ができない静岡県 リニア開通によるメリットは?

吉田:リニアに関わる、静岡県以外の自治体の反応はいかがでしょうか?

塚越:リニア中央新幹線の駅で予定されているのは、東京都・品川、神奈川県・橋本、山梨県・甲府、長野県・飯田、岐阜県・中津川、そして愛知県・名古屋です。駅ができると経済効果も大きいのですが、長野県飯田市の佐藤健市長は今回の開業断念を受けて「(開業前提に)飯田に投資をするという動きを作っていくのがずっと先の話になるので、そこの影響は避けられない」と述べ、JR東海と静岡県の協議のスピードを上げてほしいと言っています。その他、岐阜県や神奈川県、愛知県の知事たちも残念だと話しています。

ユージ:今回の件、静岡県が悪者になっているように感じてしまいますが、静岡県内に停車駅ができない(のに、工事の負担がかかる)静岡県の気持ちも理解できます。停車駅ができるわけではないですが、静岡県にとってリニア開業のメリットはあるのでしょうか?

塚越:停車駅はないのですが、JR東海はリニアの需要が増えて東海道新幹線に余裕が出るので、静岡駅や浜松駅に止まる「ひかり」や「こだま」の運転本数や停車回数を増やすと言っています。国交省の去年の試算では、停車回数をこれまでの1.5倍にすると、開業後の10年間で計1,600億円あまりの経済波及効果が生まれるということです。10年間で1,600億円という金額をどう捉えるかは難しいところですが、静岡にとって何も利益がないわけではありません。

◆水資源や環境なども大切 話し合いの継続を

ユージ:塚越さんは、「リニア中央新幹線」開業の延期についてどう思いますか?

塚越:例えば南海トラフ地震などが起きた場合、リニアは東海道新幹線のバックアップ、つまり東西分断のリスク回避にもなるので、国の国土強靭化基本計画でも推進されています。また、リニアの技術力は大変高いので、例えば海外に売ることなども考えられると思います。

一方で、静岡県の言い分も分かります。水資源や環境も大事です。あとは、人口減少と言われている社会で、出ると試算されている利益のリターンはどのくらいなのか、何十年もやっているので今さら止められない部分もあって進めているのではないかなど、そのあたりも冷静に考えたいです。

川勝知事が不適切発言で辞任する流れになりましたが、知事のこともありややこしくなっていて、(社会が)この問題について感情的になりすぎています。一旦、落ち着くということを肝に銘じたいと思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ

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4月4日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月12日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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