中田カウス「吉本鎖国」に影響与えた令和ロマンのM―1優勝コメント

令和ロマンの高比良くるま(左)と松井ケムリ

SNS上で物議をかもした〝吉本鎖国騒動〟は、ボタンの掛け違いで起きたようだ。吉本興業の芸人が1月、お笑いライブで他事務所の芸人が締め出されると騒いだが、これは吉本と同社の大御所芸人の中田カウス(74)の思惑が一致して始まった改革で、若手芸人は詳細を知らされていなかったという。

複数の吉本芸人が1月にSNSで、吉本主催のお笑いライブに他事務所の芸人を呼べなくなりそうだと明かし、「吉本鎖国」がパワーワードとしてSNSでトレンド入りした。お笑い界では、事務所主催のお笑いライブに複数の他事務所の芸人が出演している。これと真逆の事態に吉本芸人は騒然とした。

この騒動について、吉本の大御所のカウスがフライデーの取材に回答した。カウスはお笑いライブの劇場の重要性を指摘した上で、吉本芸人は劇場の出演をめぐり競い合うべきと主張。他事務所の芸人を安易に劇場に招くことに懸念を示した。いわば〝吉本ファースト〟。かく言うカウスも、中田ボタン(75)とのコンビ「中田カウス・ボタン」として劇場で腕を磨いた。

吉本やカウスには看過できないことがあったという。結成5年の令和ロマン(高比良くるま=29、松井ケムリ=30)が昨年12月のM―1グランプリで優勝した時のことだ。お笑い関係者の話。

「令和ロマンの2人は優勝後の会見で、お笑いライブで切磋琢磨したのは『吉本以外の事務所の先輩』だったと話しています。その直後の同月に行われた、M―1を振り返るトークイベントでも同様に他事務所の芸人に感謝している。これをカウスさんが知り、首をかしげたといいます」

カウスは2014年、上方漫才協会の会長に就任。大阪市・よしもと漫才劇場を拠点とする芸人の指導役を務めた経歴もあり、若手芸人への思いは人一倍強い。

「カウスさんはこれまで吉本の将来を気にかけ、若手芸人を育成してきた。令和ロマンらの台頭はうれしい反面、他事務所の芸人に傾倒している感は見逃せなかったようです。カウスさんの思いをくむ形で吉本は昨年末、劇場における吉本ファーストに着手しました」(前出関係者)

ただ、現場レベルで一連の経緯を把握できるはずがない。このため、吉本芸人が1月にSNSで吉本鎖国を投稿するに至った。

「芸人たちからすれば、吉本の判断に疑問があったのは確かでしょう。特にバズったワード『鎖国』は、他事務所の芸人との交流を一切断つようなニュアンスが含まれた。芸人たちは他事務所の芸人らとともにステージで日々、切磋琢磨しているので困惑や反発があった」(同)

結局はボタンの掛け違いで、笑いを追及する姿勢では吉本全体で一致していたわけだ。

吉本は鎖国だけでなく、変革の時を迎えている。

吉本が第1回(09年)から運営を担ってきた沖縄国際映画祭について今年3月、撤退を発表。「映画祭という形ではなく、沖縄の魅力発信やエンターテインメント産業の創出という当初の目的に資する新たな方法を模索することにした」と説明した。

これを受けて同映画祭実行委員会は臨時総会を開き、来年以降の運営のあり方を検討。10日に第16回(20、21日)を最後に終了すると発表した。

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