山田「タッチ」、細谷「古武道」、松木「パス」、藤尾「ゴール」パリ五輪予選前ラストゲームでU23代表が証明【J1リーグ2024年シーズン「波乱の序盤戦」ウラ事情】大激論(3)

柏レイソルFW細谷真大は着実に成長している。 撮影/中地拓也

2024年のJ1リーグが開幕して、1か月半が過ぎた。毎年、予想外の展開となるJリーグは、今季もJ1初昇格のFC町田ゼルビアが首位に立つなど、いくつものサプライズを提供している。驚きにはネガティブなものもあるが、それもまた課題や問題を解決することで、今後のチーム上昇へのヒントとなるだろう。第7節までの発見、そして今後の展望を、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が語り明かす!

■合流前最後の試合で「U- 23日本代表」が躍動

――今季のリーグ全体の流れは見えてきたでしょうか。

大住「第7節は、パリ五輪出場権をかけたU23アジアカップに臨むU-23日本代表選手にとって、合流前最後の試合だった。だから、けっこう注目されていたと思うんだけど、わりと活躍できていて、良かったんじゃないかな」

後藤「味の素スタジアムでの東京ヴェルディと柏レイソルの対戦は、見応えがあったよ。右サイドには山田楓喜がいて、今回のメンバーには選ばれなかったけど、パリ五輪行きを狙う染野唯月と木村勇大もいて、3人とも良かった。山田のゴールなんて、すごかったもんね。GKマテウスのパントキックをスピードを殺さずにコントロールして、そのまま持ち込んでニアを撃ち抜いちゃったんだからさ。ファーストタッチでのボールコントロールが、すごくうまいね。スピードを活かして抜くこともあれば、フワっと置くこともできるし。どんどんうまくなっているなという感じ」

大住「才能があるのに、遊んでいたという感じの選手だったけどね」

後藤「城福浩監督に鍛えられたせいかな。染野も本当に一生懸命、守備をするようになったしさ。柏の細谷真大もすごかった。相手が反則ギリギリのような止め方をしてきても、跳ね飛ばしてボールを持っていたもんね」

■細谷真大が「古武道」のような身のこなし

大住「動画で見たんだけど、あれは跳ね飛ばしたんじゃなくて、自分の体を回転させることで相手の力を吸収して、そのまま抜けていったんだよね。日本の古武道のような身のこなしだった。戦車みたいなタイプの選手が、ああいう身のこなしをするのは、すごいなと思った」

後藤「しかも1回だけじゃなくて何回もできたもんね」

大住「FC東京の松木玖生もすごかったんでしょ?」

後藤「そうなんだよ。あのパスの正確さ。90分を回った時間帯に、足がつっているのに、ああいうプレーができるんだからすごいよ」

大住「FC町田ゼルビアでは藤尾翔太がとても良いし、平河悠はスピードと運動量で大きな武器になるんだろうなという感じがするし。川崎フロンターレの高井幸大にも落ち着きが出てきたし」

後藤「高井は、この間のマリ代表との試合でも、ヘディングで競り勝っていたもんね。とんでもないミスをすることもあったけど、良くなったよね。才能があることは間違いない」

大住「柏では関根大輝もすごく良いんじゃない」

後藤「関根が高い位置でボールを欲しがっていたのに、パスが出ない場面があったんだよ。会見で井原正巳監督に質問したら、明らかに検討しないといけない点だと言っていたよ。関根に渡せばいいのに、中にボールを送って全部カットされちゃう、って。もっと使ってもらえば、もっとできたはずなのにな。今回のU-23日本代表はダメだという人が多いけど、そんなことないよね。山田があれだけ右サイドでできるようになったら、左には佐藤恵允がいて、両サイドはすごく強力になる」

■Jリーグ勢が「海外組が少ない」不安を一蹴

大住「FC東京では荒木遼太郎と松木玖生が組んだらすごく良いしね」

後藤「細谷が、ヴェルディ戦のようなプレーを毎回できるようになれば、さらに心強いね」

大住「U-23は、チームへの不安をメディアが騒いでくれるのも、良いのかもしれないよ。誰か海外組の選手が来られないと不安視されるけど、Jリーグ勢が多いようではダメだということではまったくないと思う」

後藤「そうそう。出発前の最後の試合で、皆が自ら証明したよね」

大住「それがすごいんだよね。プレーで証明して見せたというのがね。何人か出られない選手もいたけど、山田も藤尾もゴールを決めて、他の選手も中心選手として活躍して、そのまま日本代表として大会に行ける」

後藤「所属チームからしたら、いなくなっちゃって次節から大変だ、というくらいにすごいよ」

大住「意地を見せたよね」

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