群馬県内で犯罪被害者支援条例広まる 県と34市町村、見舞金や生活再建盛り込む きめ細かい支援策求める声も

 犯罪被害者を支援する条例制定が広がっている。上毛新聞のまとめによると、既に制定されたか、制定の見通しが立っているのは、群馬県みどり市を除く34市町村と県。自治体が被害者をサポートすると明記し、見舞金や生活再建に必要な施策を盛り込む。事件で従来の生活や大切な人を失った被害者側の権利を守ろうとする機運が高まる中、発生地の条例の有無による地域差が懸念されていた。関係者は制定を評価する一方、よりきめ細かな支援策の必要性を指摘している。

1年間で16市町村が制定

 昨年2月末時点で制定済みや議会で可決済みは県と前橋、藤岡、安中、神流、大泉の5市町。この1年で16市町村で条例がつくられたほか、桐生、伊勢崎など12市町村は今月から施行した。

 甘楽町は未制定だが、早ければ6月定例会への条例案提案を目指したいと準備を進める。みどり市は「犯罪被害者からの相談が来ていない」としているが、早期制定に向け準備を進めているという。

 制定した各自治体によると、見舞金は一部の住民だけに金銭を給付する性質上、議会の合意で成立した条例が運用上有力な根拠になる。条例に基づいて広報紙などで制度を周知しておけば、突然事件に巻き込まれて混乱する住民も、自身が利用できるメニューを把握しやすい。当事者となった住民を支援しようとする職員も意識が高まる。条例をきっかけに、地元警察署や被害者支援団体と協定を結ぶ動きも出ている。

もっと身近に考えて

 条例には全ての市町村が見舞金制度を置く。被害者が死亡した場合に遺族に30万円、医師から1カ月以上の療養が必要と診断された重症病の場合に10万円というケースが多い。自宅が現場となって住めなくなる事件、加害者と距離を置く緊急性が高い事件もあり、公営住宅の入居支援を設ける自治体が少なくない。

 昨年4月に施行した渋川市は家事代行の利用やカウンセリング、居住が難しい場合には7連泊を上限に宿泊費も補助する。4月施行の玉村町は弁護士相談や保育所の一時預かり、転居費用を補助する。榛東村と吉岡町は見舞金に加えて5万円を支給する。用途を指定せず、被害直後の経済的な負担軽減に充ててもらう。

 被害者支援センターすてっぷぐんま(前橋市)の高橋添(そえる)事務局長は、県と33市町村での条例制定を「大きな一歩」と評価した上で、渋川市のような宿泊代補助が他の自治体に広がることを期待。家探しで別の自治体の公営住宅も選択肢に入れられる枠組みも必要だと指摘したほか、観光客ら住民以外が被害に遭った際の見舞金、その後の裁判などで必要な弁護士探しといった支援も課題だとした。「自治体の枠を超えた柔軟な対応が大切。誰がいつ被害者になるか分からない。もっと身近に考えてほしい」と話した。

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