川崎のDF陣に相次ぐ負傷者で、由井航太が狙うC大阪戦のメンバー入り……先輩FW4人との練習を成長の糧に、「評価を上げるチャンスがあるので、出たら本当に頑張りたい」

川崎フロンターレの由井航太 撮影:中地拓也

4月13日、川崎フロンターレはセレッソ大阪と敵地で対戦する。この試合で出場の可能性が回ってくるかもしれない若武者がいる。

現在、チームは最終ラインに負傷者が相次いでいる。7日に行われた町田戦でジェジエウが前半35分で負傷交代。この試合を前に三浦颯太も離脱しており、車屋紳太郎もシーズン前からリハビリに身を投じるなど、最終ラインの枚数は潤沢とは言えない状況だ。

その中でC大阪戦でのベンチ入りの可能性が浮上しているのが由井航太だ。2005年6月生まれで現在18歳の由井は、今季、ユースから昇格したばかり。ここまで公式戦には絡めていないが、麻生グラウンドで虎視眈々と出番を狙っている。

9日の練習後、由井に次戦でのベンチ入りの可能性について聞いてみると、「チャンスが回ってくるかもしれないので、そのときに向けてトレーニングするだけです」と力強い言葉が返ってきた。昨年も、ユースから昇格したばかりの松長根悠仁が思いがけない形でスクランブル出場しているだけに、その時のことも伝えたうえで出場のイメージを聞くと、「やっぱりチームが勝ってないんで、まずチームの勝利に貢献できることが一番だと思うんで、出たときはもう本当に自分のできることをやるしかないなって感じです」と言う。自身のデビューについてよりも、チームの勝利にいかに貢献できるかだけを考えている。

■「いろんな可能性を考えている」

先述した松長根のデビュー然り、チャンスというものは突然にしかやって来ない。しかも、素直に目の前には訪れず、多くが“変化球”として迫ってくる。由井も、どんな形でチャンスがやってくるか分からないだけに、予想しないタイミングやポジションでの出場機会について尋ねると、「全然大丈夫です。出れるなら(どんなポジションでも)やりたいです」と即答する。「いろんな可能性を考えている」と、頼もしい答えも付け加える。

その理由は、試合に出ないと自分自身の評価が上がらないから。「試合に出て良いプレーをして評価を上げるのが当たり前だと思うんで、どのスポーツでも。練習でどれだけ良いプレーをしても、試合に出るチャンスにはなりますけど、評価そのものを上げるチャンスにはならないと思う。評価を上げるチャンスがあるので、出たら本当に頑張りたいです」と説明する。

由井には確固たる自信がある。それは沖縄キャンプの時から変わらず、「試合に出たい」と繰り返してきた。そうした強い意識を持っているからこそ、1月からチームに合流してプロ生活4か月目に入った中で成長した部分について聞くと、「人に強くボールを奪いに行くっていうのができてるかなって思います」と話す。鬼木達監督から求められていることは、ボールを奪いきる力の向上。それを胸に、トレーニングに励んできた。

■成長に繋がる4人の先輩FW

強くボールを奪いに行く――。その力を向上させたのは、トレーニングマッチなどの対外試合ではなく、ふだんの練習だという。Jクラブも含めた対外試合でそれが磨かれたのかと質問すると、「いや、練習です」と言い切るのだ。

「練習で、シン君、エリソン、悠さん、バフェ、いろんな選手とやることで成長してます」

山田新、エリソン、小林悠、バフェティンビ・ゴミスの4人の名前を挙げて、由井は自身の成長に繋がる要素を説明する。しかも、その4人それぞれの細かいプレースタイルと、何が成長につながるかをスラスラと話していく。あまりに詳細に、そして、すぐに出てきたため、分析して言語化しているのかと尋ねると、「分析よりも、体で覚えます」と言う。

麻生グラウンドで先輩FWを相手に成長してきた成果をプロのピッチで披露できるか。頼もしい18歳が、チャンスを掴もうとその時を待っている。

(取材・文/中地拓也)

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