リニア中央新幹線 開業延期に地元の声は 工事日程などは変更なし 相模原市緑区

工事が進む橋本駅南口

JR東海(東海旅客鉄道株式会社)が建設を進めるリニア中央新幹線について、東京―名古屋間の開業が当初予定の2027年までに実現できないとした3月末の報道を受け、神奈川県で唯一の停車駅「神奈川県駅(仮称)」の建設工事が進む橋本周辺の住民や関係者に話を聞いた。

JR東海は当初、東京―名古屋間の開業予定を2027年に定め計画を進めてきた。しかし、静岡県が環境問題を理由に現在も工事を認めていない。一部からは部分開業の声も挙がっていたが、それについてはJR東海が否定したため、東京―名古屋間の全線開通が開業の前提となっている。

それを受け、JR東海は27年の開業を事実上断念したと3月29日に発表した。この報に対して、本村賢太郎市長は「誠に残念」とし、「JR東海から、開業の遅れによる市内におけるリニア工事や用地取得等のスケジュール変更はないとの報告を受けているので、引き続き、安全に配慮しながら工事を進めてもらいたい」とコメントを出した。

「大きな影響ない」

橋本駅周辺の商店で組織される橋本商店街協同組合の羽田野龍丈理事長は、今回の報道について「開業がずれてしまったことは大変残念。もともと商店街の対象となるお客様は地域の方なので集客に大きな影響は無いと感じているが、期待値が高まっていたこともあり、県を超えた来街者に向けたイベントや取り組みが先延ばしになってしまう影響は多少なりあると感じる」と述べた。

また、「リニア計画を新たな節目とし、まちに降りた方がファンになってもらえるような交流拠点になれば」と期待する。

「想定内」

橋本地区の自治会で構成される橋本地区自治会連合会の安藤和実会長は「延期は想定内。そもそも静岡で工事が始まっていない以上、いつ延期を正式に発表するのだろうというのが本音だった」とし、「橋本の工事は計画通り進むだろうが、まちづくりの全体像が見えていない。人が集まるような計画を進めてほしい。駅前にオープンした(イノベーション創出促進拠点の)ファンタステックラボをPRしながら、早く開通して橋本に今以上に活気が出れば良い」と引き続き早期開業を要望する。

「市民の不安に」

一方で、開業延期の報道に対して、12年に設立したリニア新幹線を考える相模原連絡会の浅賀きみ江代表は「現在の社会情勢の中でリニアは必要ないと考えている。建設には賛成できないし、このままつながらないでほしい」と反対の立場を示す。「現在も工事によって環境破壊や住民の生活が脅かされており、リニア工事が市民の不安になっている。契約や工事ありきではなく、市民としっかり向き合ってほしい。そして、自分たちのまちをどうしていくのか市民も一緒に考えてほしい」と話した。

なお、静岡県の川勝平太知事は4月2日に辞意を表明しており、今後のリニア計画にどう影響するのか注目が集まっている。※4月6日起稿

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