2026年のF1参戦に向けドライバー決定を急ぐアウディ。影響は他チームに伝播するか

 F1のドライバー市場は史上最大の熱狂に包まれている。これは、2025年のシートがまだ3分の1しか埋まっていないことと、将来のエントラントであるアウディがこのマーケットに参加しているためだ。ドイツのブランドは2026年から翌27年末までの新たな技術規則およびスポーティングレギュレーション下での最初の2シーズンに向け、今年の終わりにザウバーに加わるふたりのドライバーとの契約を急いでいる。

 市場が盛んに動いていることはレッドブルのヘルムート・マルコも認めているところだ。しかし彼は他のチームの多くのチーム代表と同様に、従来どおり7月末まで待ってから将来の選択をしたいと考えている。

「ドライバー市場は4月に爆発的に拡大しているが、通常4月には誰も真剣に話をしない。これは馬鹿げている」と今月81歳となるオーストリア人は不満を漏らした。「我々はこのゲームに飛び込むつもりはない。様子を見てから、あとで最善の選択をするつもりだ」

 そしてマルコは、将来のライバルであるアウディがこの異常な熱狂の背後にいることをほのめかしながら、次のように続けた。

「何が起こっているのか分からない。アウディがプレッシャーをかけていると聞いているが、新参者がドライバー市場にプレッシャーをかけるのは少々奇妙だ」

 ザウバーのCEOであるアンドレアス・ザイドルは、アウディの取締役会を満足させる強力なドライバーラインアップを必要としているため、本命のペアとしてカルロス・サインツ(フェラーリ)とニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)をターゲットにしていると目される。

 ヒュルケンベルグは、ポルシェのWEC世界耐久選手権プログラムで短期間一緒に仕事をして以来、ザイドルの個人的なお気に入りとなっている。ドイツ人であるという利点もあり、アウディの国内市場にとっては魅力的だ。一方、ヒュルケンベルグは今年8月に37歳になるため、チームにとって長期的な選択肢とは見なされておらず彼には2年契約がオファーされているようだ。

2015年にポルシェのWEC・LMP1プログラムに参加したニコ・ヒュルケンベルグ(右)と、当時チーム代表だったアンドレアス・ザイドル(左)

 サインツはスクーデリアでの最後の年にあたる今季、自身にとって最高のスタートを切った。彼は2年の延長オプションが付いた3年契約をオファーを受け取ったと予想される。僚友のシャルル・ルクレール(フェラーリ)や王者マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、マクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、彼らは全員現在の所属チームと長期契約を結んでいるため、サインツは市場の中で長期契約が可能な最高のドライバーと見なされているのだ。

 しかし、急いで“フォーリングス”と契約を結ぶことは彼の最大の利益にはならないだろう。なぜならメルセデス、レッドブル、アストンマーティンも来年彼を起用することに関心を持っているためだ。

 第3戦オーストラリアGPでのセンセーショナルな勝利を含め、開幕4戦を終えた段階で虫垂炎のため欠場した第2戦を除く計3戦で3回表彰台を獲得しているサインツの評価は、グランプリのたびに上がり続けている。そのため彼はあまり早くに移籍先を決めるつもりはないかもしれないと認識しているザイドルは、エステバン・オコン(アルピーヌ)のマネジメント陣との交渉も開始した。少なくともジョージ・ラッセル(メルセデス)やアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)が市場でフリーになるまでは、オコンがサインツに代わる良い選択肢になると考えているのだ。

 ザイドルは、現在のザウバーのドライバーであるバルテリ・ボッタスについては単なる代替候補と見なしているが、エンジニアリングチームは経験豊富なドライバーをさらに2年間引き止めるようザイドルの説得に努めてきた。彼らはボッタスのフィードバックを評価しているし、このフィンランド人がトップグループの半分の競争力しかないマシンを与えられても結果を出すところを目にしてきたからだ。

 ドイツの情報筋によると、アウディは5月中旬までにドライバーと契約したいと考えているという。これを念頭に、2025年シーズンが始まる10カ月前に優秀な人材をアウディに取られることを防ぐため、彼らと同じように将来のパイロットを確保するための行動を通常よりも早く起こすチームが他に出てくるかどうか見ていくのは、興味深いことだ。

F1第3戦オーストラリアGPで優勝したカルロス・サインツ(フェラーリ)
ザウバーグループの取締役会会長に就任したオリバー・ホフマン。アウディ・フォーミュラ・レーシングGmbHの株主委員会委員長を兼務する

投稿 2026年のF1参戦に向けドライバー決定を急ぐアウディ。影響は他チームに伝播するかautosport web に最初に表示されました。

© 株式会社三栄