朝食を毎日食べる習慣がある人は何割? “よく噛んで食べる”重要性を専門家が解説

朝食を食べるメリットとは(写真はイメージ)【写真:写真AC】

朝は時間がなかったり、食欲がなかったりして、朝食抜きで一日をスタートさせていませんか? 実は、朝食をよく噛んで食べることは、脳の活性化に深い関係があるそうです。4月11日は「しっかりいい朝食の日」。記念日にちなみ、健康的で有意義な朝食について考えます。自然科学研究機構で神経科学や歯科医学専門の特任准教授として活動する坂本貴和子先生に、朝食の咀嚼と脳の目覚めの関係、朝食に向くおすすめの食材について教えていただきました。

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朝食を毎日食べる人のほうが、食べない人よりも早くに脳が働き始める

カルビー株式会社が2024年2月、全国の18歳~69歳の男女を対象に行った「朝食に関する調査」の結果によると、「朝食を毎日食べる習慣がある人」は70.8%。そのうちの57.4%が、朝の起床時の体調について「問題がない(目覚めがすっきりする/頭がすっきりする/快調である/気分がいい/体が軽い/とくに自覚することはない)」と回答しました。

また、朝食を「噛んで食べる(よく噛んでいる、まあまあ噛んでいる)」と答えた人に限ってみると、その約8割(81.1%)が「起床後1時間未満で脳が働き始める」とし、さらに「仕事の目標を達成している」と回答した人が4割近くの37.3%になりました。

朝食に関する意識調査【画像:カルビー株式会社】

朝食習慣が、一日の早いタイミングで脳を活性化し、スムーズに仕事に取り組めること、そして目標達成にもつながる可能性を高めてくれることがわかります。

朝食でよく噛んで食べると覚醒を実感できる その理由は…

朝食をよく噛んで食べる重要性について、坂本先生は次のように話します。

「朝の寝起きは体が最も栄養を欲しているタイミングであるため、しっかりとしたエネルギー摂取が、体をきちんと機能させるうえでとても重要です。しかも、よく噛むことで胃や腸の負担を軽減しながら、栄養をいち早く体全体へと行き渡らせることにもつながります。また、咀嚼は脳の活性化や反応時間の短縮など、さまざまな効果をもたらすことが研究でわかってきています。朝食をよく噛んで食べることは、頭の状態をいち早く目覚めさせる、脳の覚醒に有効だといえます」

坂本先生によると、咀嚼によって脳が活性化する理由として、咀嚼が「リズム運動」の一種であることが考えられるといいます。リズム運動とは、無意識で続けることができる運動のこと。歩行や自転車漕ぎなどが代表的な例で、脳の覚醒を促す効果があることが知られています。

つまり、咀嚼もリズム運動として、脳の覚醒を促すことにつながっていると推定されます。朝食をしっかりと噛んで食べることは、朝から歩いたり、自転車を漕いだりするのと同じような影響を脳に与えることができるというわけですね。

脳を目覚めさせるおすすめの朝食メニュー

では、とくに脳を目覚めさせるのにおすすめの朝食メニューは、どんなものなのでしょうか。坂本先生によると「歯ごたえのある食材」が好ましいとのことです。朝に調理する時間的な余裕がない場合は、噛みごたえのある食材でできた栄養バーやシリアルなどがおすすめだといいます。

「栄養バーやシリアルのなかでも、味覚や嗅覚、食感など、さまざまな感覚を刺激する食材がひとくちに含まれていれば、脳もより刺激されやすいのではないかと考えます。『食べていて楽しい』ことも、いい刺激になるでしょう」

ドライフルーツなどの入った噛みごたえのあるシリアルなら、手軽ですし、朝食習慣も続けられそうですね。

無理に噛もうと意識しすぎなくてOK

「朝食でよく噛む」ことの重要性が分かると、硬い食材を用意したり、たくさん噛まなきゃ! と意気込んでしまったりしがちですが、坂本先生は「意識しすぎないことが大事」だといいます。

「そもそも口やアゴの状態は、人それぞれ違い、体調も日によって違います。食材の硬さや噛む回数の最適解は、人それぞれ、日によって異なります。脳を覚醒させるリズム運動としてのポイントは『無意識で続けられる運動であること』です。ですから、咀嚼についても無意識に続けるリズム運動になるように、自分の体や生活に負荷をかけない範囲で、よく噛む食品を選んで朝食を取ることを意識しましょう」

よく噛んで食べる朝食習慣。ぜひ、無理のない範囲で始めてみてください。

【調査出典】
カルビー株式会社「朝食に関する意識調査」

◇坂本貴和子(さかもと・きわこ)
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 共創戦略統括本部 特任准教授。東京歯科大学卒、総合研究大学院大学修了博士(医学)、歯科医師、京都大学医学部附属病院歯科口腔外科学講座医局員、日本学術振興会特別研究員(PD)、生理学研究所/総合研究大学院大学 助教、自然科学研究機構 研究力強化推進本部 特任准教授を経て現在に至る。

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