【4月11日付社説】台湾地震/現地に心寄せ支援に全力を

 台湾の東部沖を震源とする最大震度6強を観測した地震の発生から、1週間が経過した。台湾の消防当局によると、10日時点で16人の死亡が確認されており、1100人以上が負傷している。

 最も揺れが大きかった花蓮地域では建物が倒壊し、低層階部分がつぶれて住民らが閉じ込められたマンションもあった。山間部では落石や土砂崩れが発生し、道路や橋が寸断された。有名な観光地「太魯閣(タロコ)国立公園」などでは行方不明者の捜索が続いている。

 余震が相次ぐなか、被災した住民らは緊張の日々を過ごし、捜索活動も難航している。台湾政府には、捜索活動と被災者の支援などに全力を挙げてほしい。

 日本と同様に、地震が多発している台湾での大きな地震は、1999年に2400人以上が亡くなった台湾中部の地震以来だ。今回も電気や水道などのインフラ、老朽化した建物などの被害が深刻で、これからの復旧・復興は長期化が避けられない見通しだ。

 今後、被災状況が明らかになれば、インフラの復旧や仮設住宅の設置、住宅の再建など、東日本大震災を経験した日本、本県だからこそ、伝えられる知見や技術などがあるはずだ。99年の地震の際は日本から援助隊やボランティアらが現地に入り、仮設住宅の提供などに取り組んだ。今回も官民が連携し、人的支援をはじめ復旧、復興に貢献していくことが大切だ。

 日本と台湾は正式な外交関係にないが、親日家が多く、過去の災害時には支援を受けてきた。東日本大震災では、200億円超の義援金が寄せられている。

 県内では、震災時に支援を受けた自治体や、交流活動に取り組む民間団体が募金活動などを始めている。震災の苦しい時に受けた恩に報い、台湾の被災者を支えるため、一人でも多くの県民は募金などに協力してほしい。

 台湾の主要産業である観光業は今回の地震で施設の倒壊、宿泊客の予約キャンセルなど大きな打撃を受けている。しかし被害の大きい東部以外の地域では交通インフラが回復し、観光施設なども通常通りに営業しているという。

 昨年の本県への外国人宿泊者数のうち、最多は台湾からだ。1月からは福島空港と台湾を結ぶ定期チャーター便が運航している。

 震災以降、本県は正確な情報に基づかない風評などで被害を受けてきた。目的地の安全を確認して現地を訪れたり、特産品を積極的に購入したりすることが支援になることを理解しているからこそ、できる範囲で行動していきたい。

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