体操・杉原愛子「ブランクを経てレベルアップした姿を見せたい」 全日本選手権は今日開幕

新たな思いを胸に(杉原愛子)(C)日刊ゲンダイ

【パリ五輪を目指す注目女子アスリートの履歴書】

杉原愛子(24歳/株式会社TRyAS)=体操(第4回)

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杉原が目指す3度目の大舞台、パリ五輪は特別な位置づけにある。

初めてのリオ五輪は憧れの場として挑戦の意味合いが強かった。2度目の東京五輪は選手生命を懸けた手術を乗り越えた上で、自国開催。集大成を見せ、恩返しの場にするつもりで臨んだ。

「どちらかといえば、今までは自分のために五輪を目指してきましたが、今回はそれだけではありません」と杉原。パリ五輪を目指す決意とともに実施した米国合宿参加への資金援助を募るクラウドファンディングには、希望額を大幅に上回る500万円超の支援金が集まった。これまでとは背負うものも違ってくる。

「皆さんのおかげで米国合宿に行かせていただき、世界のトップ選手たちから今までにない刺激を受け、さらに力をつけることができました。最高の舞台で少しでも結果を出して恩返しをしたい。同時に、演技を通じて体操の楽しさ、魅力をもっと伝えていきたい。とにかくその気持ちが大きいです」

杉原が考案した新型衣装「アイタード」は少しずつではあるが、体操界に変化を与えている。大舞台で着用して一気に知名度をはね上げたいという目標もある。

「団体では全員の衣装を統一する必要があるので、実際に使えるかはなんとも言えません。でも、代表入りしたら相談してみるつもりですし、もしも個人で出られるのなら、着てみたいと思っています。その前に全日本選手権ですね」

パリ五輪に出場するためには、全日本選手権の成績上位者が出場するNHK杯で上位に入る必要がある。順位は全日本選手権の予選からの得点を含む総合点で決まるため、前哨戦といえど、五輪切符に直結する。

全日本選手権への出場は東京五輪の代表選考を兼ねた2021年以来、3年ぶり。ブランクはあるが、調整力と精神力には自信がある。

高校1年生の15年から21年東京五輪までの間、何度もケガに泣かされながらも一度も代表から外されなかったのは杉原だけ。大会ごとにピークを持っていく技術を磨いてきた。東京五輪の団体メンバーは皆、引退したが、「本人が決めたこと。私は私です」と割り切り、我が道を行く。

「どれだけ過去の成績が良くても、まず全日本選手権で失敗したらそこで終了です。着地ひとつでメダルの色が変わるくらいシビアな世界。予選から余裕も油断もありません。私は3年ぶりのため、挑戦者として臨みます。以前よりも強くなっている自覚はある。まずは日本のファンの皆さまに、レベルアップした杉原愛子を見せたいです」

全日本選手権の幕は11日に切って落とされる。 (おわり)

▽杉原愛子(すぎはら・あいこ) 1999年9月19日、大阪府東大阪市生まれ。4歳で体操を始め、13年に日本ジュニア代表入り。15年に日本代表に選ばれると、16年リオ五輪から21年東京五輪まで体操界を牽引してきた。22年6月に競技生活に幕を下ろすも、翌23年6月に現役復帰。同年11月にパリ五輪を目指すことを発表した。第一線を退いていた期間に体操の魅力を発信すべく、「株式会社TRyAS」を起業。社長としての顔も持つ。

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