【岩本輝雄】円熟味あふれるガンバの宇佐美。攻撃にメリハリをつけて、個でも魅せる。存在感は抜群だ

[J1第3節(延期分)]横浜 0-2 G大阪/4月10日/日産スタジアム

マリノスとガンバの一戦は、2-0でマリノスが勝った。終了間際に植中が勝利を決定づける追加点を挙げたけど、やっぱり強烈だったのは、ロペスの先制点。ゴール前の狭いスペースで、寄せてくる相手に関係なく、巧みなコントロールから確実に仕留める。ここぞの勝負強さはさすがだった。

ガンバからすれば、悔しい負けだろうね。シュート数は相手の11本に対して21本。チャンスの数で上回ったにもかかわらず、無得点に終わった。

決定力は1つの課題だとして、それでもガンバのサッカーが悪いわけではなかった。果敢に攻め込んで、相手ゴールに迫る。あとは本当に“決める”だけだった。

厚みのある攻撃を繰り出すなかで、中心にいたのは宇佐美だ。以前は局面打開からフィニッシュまで1人でやってのけるのが魅力だったけど、最近はそれプラス、チームメイトを活かすプレーとかも板についてきた。

最前線で起点となる一方で、ちょっと降りてきて組み立てに参加して、ボールの流れをスムーズにする。その時のポジショニングやタイミングも、試合の状況をよく見ながら、判断しているんだろうなと思う。

前にアグレッシブに行くだけじゃない。キープして、タメを作ってとか、攻撃にメリハリをつける。今年からガンバでコーチを務めるヤットからは、そういったゲームメイクの部分も学んでいるんじゃないかな。

【動画】岩本輝雄がトッティとサッカー対決!
個の力で魅せられるし、派手さはないかもしれないけど、効果的なパスや味方へのサポートでチームを下支えする。存在感は抜群だよ。

プラチナ世代の宇佐美は、今年32歳。良いキャリアを重ねているような気がする。円熟味を増してきたというか、一つひとつのプレーが洗練されてきて、また違った“味”を出せる選手になってきているよね。

ガンバは今、開幕当時の勢いはなくなってきているかもしれない。4戦未勝利、3試合連続でノーゴール。トンネルから抜け出せていないけど、この苦境を脱するためには、宇佐美の奮闘がカギを握っていると思う。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、51歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた“40メートルFK弾”は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。23年に『左利きの会』を発足。

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